大学ホーム外国語学部一般の方論文・翻訳コンテスト第2回中国語課題 → 日本語訳

論文・翻訳コンテスト

中国語課題 → 日本語訳 高木 幸子

昨晩の中国・西洋双方の要素を取り入れたオペラで、管弦楽や合唱の奏でる三曲の美しい曲目に、私はまるで神に惑わされたかのように陶酔してしまった。

演奏は、晩春の早朝を彷彿とさせる。しとしとと降る霧雨が私の頬をしっとりと湿らせ、軽やかな感覚さえ感じられる。私の衣服の袖をすり抜けていく爽やかなそよ風は、あたかも恋人の吐息が私の手を撫でるようだ。弱々しく降りしきる雨で湿り気を帯びた庭の白い明礬石の小道は、薄く乳液を塗ったようである。その庭に一歩足を踏み入れると、可愛いまでの滑らかさを感じてしまうようだ。

ここは、まるで花園の中のようだ。新鮮な花々は、未だ美しい清らかな夢を見ている。かよわい雨が密かに汚れを洗い流し、彼女たちのしなやかな甘い光沢は、さらに美しく輝きを増していく。朝の美しさの後、我々は太陽の日射しの下で、慎み深くかつ奥ゆかしさをかね備えた心安らかな紅色の花を、物寂しさのある紫色の、そして苦笑いしているような白色や緑色の花々を見つけることができる。そして、つい先ほどまで目の前にあった美しく光り輝いていた花々は、今度は色褪せて何となく陰鬱な感じさえ受ける。・・・・・・終わろうとしている美しい春を、憂えているからなのか?それとも、春に厭きてしまったからなのか?

陰鬱な雨によって、花園の濃厚な香りが消えてしまう。そして、微かな東風が、一筋また一筋と空腹を誘うほのかな花の香りとともに、みずみずしい草原と大地の匂いを運んでくる。また、周辺の水田や沼沢地には、植えたばかりの稲苗、若く元気な麦、また木陰で揺れる柳、といった清新な初夏の匂いを運んできている。甘美というわけではないが、しかし私の嗅覚を強烈に刺激し、愉快な倦怠感さえ与えてくれる。

何と素晴らしい!これらは、全て演奏の中にあるものなのである。私は耳で聴き、そして目で、鼻で、舌で、体全体で聴き入り、心で唱っていた。そしてついに私は、ある種の心地よい麻痺状態に襲われ、完全に歌に引き込まれてしまったのである。その後は、自ら歌を口ずさみ、また音楽に聴き入ってしまい、まるで世界中が歌声だけになってしまったかのようであった。

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