大学ホーム外国語学部一般の方論文・翻訳コンテスト第3回英語課題 → 日本語訳

論文・翻訳コンテスト

中国語課題 → 日本語訳 田澄

姉は祖母が列車を「棚車(ぼうしゃ)」と呼ぶ理由が分からなかった。祖母はいかにも理由があるかのように、臆面もなく「貨物を運ぶ列車を炭車と呼ぶのだから、人を運ぶ列車はもちろん『棚車』と呼ぶに決まっている。私は間違ったことを言っていないよ。何も知らないと思わないでほしいね。私はすでに五十年前には列車に乗っていたんだから!」とまくし立てるように説明した。姉は依然として理解できなかった。そのうえ、ずっと「棚車」という言葉に違和感を感じていた。「棚車、棚車」と、姉はささやきながら隣りに座っていた人を見て顔をしかめた。その人は微笑んだ。彼は五十代ぐらいのエリートらしき男性だったのだが、私は彼が喜んで祖母の話に同調してくれるとは思いもしなかった。「棚車ですよね。棚車とは貨車の空いている車両のことです。」と彼は続けて、「私も若いころは棚車に乗ったことがあって、その切符はとても安く手に入りました。席がない代りに、立っていてもよし、床に座ってもよし。たまに新聞紙を敷いて、仮眠をとることもできるんですよ。」と言った。

姉はその男性の様子を伺ってから、祖母の顔をちらりと見た。姉は昔の古くさいことには全く興味がなかった。そして、彼女は祖母がその男性の話にうなずくと思っていた。しかし彼女は、祖母がその男性を嘲笑うかすかな声を聞いた。祖母ははっきりと、その男性の追憶を正しいとは思わないという素振りを示した。「ふんっ、床に座ったり、車上で仮眠をとれたりするって?」祖母はその男性をじろっとにらんで、「立てるところすらないんだから。人がぎっしりいて互いに押し合い、ほかの人の足を踏んで立っていたんだ。子供は大人の肩からぶら下がっているし。どうして座ったり眠ったりする余地があるというんだい。」と言った。隣りに座っていた男性は一瞬言葉に詰まった。しばらく考えて、ばつが悪そうに「私はそんなに混んでいる棚車には乗ったことがありません。あなたはもしかして戦争のときに乗っていらっしゃったんですか?」と尋ねた。姉は再び祖母の顔を覗き込んだ。祖母の顔にはやっと勝者のような満足げな表情が浮んだ。「実にいろいろなところで戦争していたころだよ。至るところで秩序が乱れ、混乱に陥っていた。あんたたちは私がどうやって棚車に乗り込んだのか分かるかい?懐に一人抱いて、手で一人を引いて、お腹の中にも一人抱えていたんだ。それだけでなく、背中にはひとかごのひよこを背負っていたんだよ。」祖母の手は次第に四方八方に動き始め、当時の列車の情景を真似ていた。彼女の声の調子も生き生きと活気に満ち始めた。「私が受けた苦労を想像してみなよ。危険から逃れるために、そんなふうにして棚車でまる一日立っていたんだ。人はしまいには一本の丸太のようになってしまうんだよ。棚車から降りたあと、座りたかったけれど、どうしても腰や背中が曲がらなかったんだ!」

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