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第4回翻訳部門(日本語課題 → 中国語訳)講評 教授 塚本慶一

 今年の翻訳コンテストには、北は山形から、南は福岡まで21本の訳文(和文中訳)が寄せられ、年々参加者が増えてきたことをたいへん嬉しく思います。人数が増えただけでなく、訳文の完成度も昨年より高くなったように感じられました。特筆しておきたいのは、山形県の九里学園高等学校から数名の応募があり、その訳文から他人の力を借りずに、仲間同士で自分たちが現段階で身に着けている知識のすべてをフル活用した痕跡が随所に見られ、たいへん微笑ましい気持ちになりました。これからもぜひ頑張ってほしいと応援の言葉を贈ります。

 今回の課題文は白洲正子著『日本のたくみ』(1981)の一節で、日本の箸と中国の箸の違いについて書かれたものです。洗練された日本語を遜色のない中国語に訳すには、まず日本語に対する正確かつ深い理解がなければなりません。そのうえ、中国語の優れた語彙力と表現力も備えていなければ到底よい訳文はできません。とりわけ文章の中には「我田引水」、「とどめをさす」など難しい熟語もさることながら、中国系箸と日本の箸の差について「はさむものと、つまむものの差」という微妙な表現などは、大変訳しづらいのではないかと思われました。しかし、我々の予想は見事に裏切られ、優秀賞に輝いた片矢東滋郎君は高校一年生(15歳)と思えないほど滑らかで、センスの光る訳文に仕上げています。また、上述のポイントをしっかり押さえて、スムーズな中国語に訳した人が数名いて、優劣が付け難いものでした。最終的には全体的な流れの良さと誤訳の少なさから奨励賞には飛田由佳さんが選ばれました。

 日本と中国は近隣ですが、残念ながら、中国語に訳されている日本の文学作品等はまだまだ少ないのです。今回のコンクールをきっかけに、今後片矢君、飛田さんのような若者が日本の様々な作品をどんどん中国語に翻訳して、交流の輪を広げてくれることを切に願っています。

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