大学ホーム外国語学部一般の方論文・翻訳コンテスト第5回論文部門「私の好きな方言」講評

論文・翻訳コンテスト

第5回論文部門「私の好きな方言」講評 教授 金田一秀穂

 方言は失われつつあるけれど、温かいし大切だ、という言説は、現代の日本の世にあふれている。そうした良識的な意見は、通り一遍で、言われていることを素直に受け入れて繰り返しているだけの場合がある。残念ながら、今回応募されたものには、そのようなものが多く、読む者に訴える力が弱かった。高校生の論文に望むことは、そこから更に一歩踏み込んだ考え方である。そこに自分なりの感じ方を交え、疑い、自分の中を通過させ、ひきつけたところから、常識的な考え方を眺めなおす視点が欲しいと思う。

 選ばれた城後彩加さんの論文は、その中にあって極めてユニークであり、最初の一行を読んでいただければすぐに分かるとおり、圧倒的な訴求力を持っている。しかも、単なるアイデアに終わらせず、その内容も、極めて経験的である。さらに、これらの文章をかなり苦心して調べて作り上げた跡がある。完成させるまで、おじいちゃん、おばあちゃんとどのような作業を行ったのかが見えてくる。そのほほえましさが、どんな言葉よりも、方言の優しさを雄弁に伝えている。審査員全員一致での、堂々たる最優秀論文だった。

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