大学ホーム外国語学部一般の方論文・翻訳コンテスト第5回論文部門「外国人に紹介したい日本の魅力」講評

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第5回論文部門「外国人に紹介したい日本の魅力」講評 教授 岩ア公生

 今回本課題に対し35件の応募がありました。その大部分が日本の伝統文化の魅力について記述されたものでした。

 現在、世界遺産に登録されている「日本の世界遺産」は14件ありますが、そのうち11件は文化遺産です。文化遺産とは歴史に裏打ちされた伝統遺産と言えます。「外国人に紹介したい日本の魅力」は、日本固有の伝統文化を切り離して論じることはできないということが、応募論文の多くから伝わってきました。

 アニメなど日本の新感覚文化について記述した論文がいくつかありましたが、それを象徴する原宿や秋葉原が現代日本の魅力であることは否めません。宮崎駿が創出するジブリ作品の数々はこれまで全世界で絶賛されてきましたし、アニメの殿堂ともいうべきジブリ美術館やお台場で開催されるアニメフェアへ多数の外国ファンが殺到する現象が起きています。

 しかしながら、これら近代文化の歴史は1世紀も経ておりません。田中希実さんは、幾世紀を超えて存在する茶道の世界にこそ日本人の伝統的精神世界があると考えています。田中さんは茶道部に所属し、実際に「一期一会」、「和敬静寂」といった観念世界に身を置いています。茶道の精神世界は茶事を通して、相互理解、相互信頼、相互依存、相互発展を深め、異文化コミュニケーションを図りつつ、グローバルな共存共栄社会の実現を目的としています。茶道は、作法を重んじるイギリスの紅茶文化と対比できると田中さんは記述していますが、両者の根底にあるものは、「ホスピタリティ=おもてなしの心」と言えないでしょうか。

 外国人から見て日本固有の文化と思われるものに武士道があります。松橋和大くんは剣道を通して日本人の精神世界を外国文化と対比することを試みています。剣道は単なる武術にとどまらず、礼儀作法の習得と精神修養を目的としています。剣道の奥義に「見極める」があり、相手の動きをよく見て少しも無駄のない行動をすることが「見極める」ことであり、この点に日本人の行動原理があると松橋くんは考えています。

 上記ふたりの論文に共通して見られる主張は、自国の伝統文化をできれば体験をとおして理解し、そのうえで外国文化と対比することで、自国文化の魅力がさらに鮮明になってくるということであろうと考えました。

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