大学ホーム外国語学部一般の方論文・翻訳コンテスト第5回論文部門「携帯電話は中学生や高校生に必要なのか?」講評

論文・翻訳コンテスト

第5回論文部門「携帯電話は中学生や高校生に必要なのか?」講評 教授 長谷川弘子

 第5回論文・翻訳コンテストでは、3つの課題が出されました。その中でも「中学生や高校生に携帯電話は必要なのか?」は96件の応募をいただきました。携帯電話という身近な存在がテーマですので、非常に興味を持って論文に取り組んでいる姿勢が見て取れました。個人で応募して下さったケースのほかに、高校の担当の先生のご指導で何名もの応募があったケースもありました。

 全体的にみると、多くの場合、最初に問題設定に対する明確な答えを書き、そのあとで理由を三つ程度挙げて論述し、最後にもう一度最終的な意見を述べる、などという論理的な書き方ができていたと思います。今回は、質問の形のテーマ設定ですので、質問に対して明確な意見を表明しているか、という点を重視しました。さらに、もう一つ大切だと考えたことは、単に論旨を明確にするのみではなく、いかに深く考えたか、ということです。一つのテーマをめぐって、様々な角度から自分なりに考えているか、自分自身の考えを自分の言葉で表現できているか、全体としてまとまったその人なりのメッセージが伝わってくるか、などの視点から選考を行いました。

 神阪容子さんは、素直なわかりやすい文章で、自分の考えをストレートに述べているところに好感を抱きました。自分の体験したことを見つめて、深く考えていることが、文章から感じられました。言葉使いにはもう少し工夫すべきところがありますが、非常に良い点は、携帯電話の長所と短所をさまざまな立場や視点から考え、その上で、特定の考えに縛られることなく、柔軟に論を進めている点です。また、文章にはリズムがあり、読み手を引き付ける何か魅力的なものを持っています。語彙力という点ではまだまだですので、本をたくさん読むように心がけ、さらに勉強していただきたいと考えます。

 松田リツ子さんは、読む人の心をつかむ文章の技を持っています。特に、会話文「ケータイなんて持ってる子いっぱいいるよ。」で論文を書き始めるなど、短い印象的な言葉遣いが非常に優れていました。読んでいてとても面白かった、読みやすかったというのが選考に当たった教員全員の意見です。私の印象では、原稿用紙に書くよりもインターネットの画面にぴったり合うような新しいタイプの文章だと思います。残念だったのは、論の進め方が少しあいまいな点です。なぜそう主張するのかをもっとよく考えて書き、全体の構成をしっかり意識するように気をつけると、さらにいい論文が書けると考えます。

 杉本可愛子さんは、数ある論文のなかで一人だけ、具体的な対策を「四つの約束」として打ち出していました。その点が非常に光っていたと思います。中学生や高校生が携帯電話を持つことの長所や短所について書いた論文は多くありましたが、そこで終わってしまっている論文が多かったなか、杉本さんの論文はその点でユニークでした。ただし、少し問題だった点は、論文のテーマである「中学生や高校生に携帯電話は必要なのか?」という問いかけに対する答えがはっきりとは打ち出されていなかった点です。中高生の携帯電話使用に関しては問題があるので約束ごとを決めて使おう、という論の進め方ですが、一歩進んで思い切って「必要なのである」という意見を明確に書くべきだったでしょう。とはいえ、問題に対して積極的な対策を提示している姿勢は評価するべきと考えました。

 私たち教員は携帯電話についてはおそらく高校生の皆様ほど詳しくない、どちらかというと固定電話に長くなじんできた世代の人間です。今回、皆様の論文を読ませていただき、知らなかったことや驚くべきことが多くありました。新しい世界に触れることができて、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。また、皆様が熱心に論文に取り組んでくださったこと、きれいに清書した原稿からも感じられました。今回応募をして下さった高校生の皆様に改めて御礼を申し上げます。

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