大学ホーム外国語学部一般の方論文・翻訳コンテスト第5回論文「私の好きな方言」

論文・翻訳コンテスト

私の好きな方言 福岡県立 筑紫丘高等学校 二年 谷井美月

 私は小さいころから父の仕事の関係で、いくつもの方言に出会う機会がありました。その中でも、私が一番印象に残っている方言はいらっしゃいませという意味がある「めんそーれ」です。これは沖縄で使われている方言です。いらっしゃいませという意味があるため、主にお店に入るときなどに言われます。

 本来、方言というものは長い時間をかけて地域に浸透し、毎日の生活の中で使われ、耳で聞いて身につくものだと思います。しかし耳で聞くだけではなく、目で見る方言というものもあります。目で見るということは、方言を文字で表すということです。方言を文字にすることは、私には違和感がありましたがある出来事をきっかけにして、その考えが変わりました。

 私の考えが変わるきっかけとなった出来事は、以前に私が沖縄に住んでいたときのことです。夏休みに家族で県外に旅行に行き、空港の到着ロビーに置いてあった看板を見ました。「めんそーれ」と書かれた看板を目にしたとき、沖縄に帰ってきたのだなぁ、と実感しました。目で見て、それだけで意味がすぐにわかったのは、めんそーれという言葉が沖縄で広く知られているからだと思います。けれども、私の考えが変わったのはそのような理由ではありません。

 私はあのとき、「めんそーれ」から安心感ともいえるような温かさを感じたのです。ありがとう、などといった言葉ではなく、ただ「いらっしゃいませ」というだけの言葉ですが、私には「めんそーれ」が「おかえりなさい」と言っているかのように思えました。普通のあいさつでも、方言に変えただけでその土地の人々の心を感じることができるのではないか、ということを文字にされた方言を見ることで、方言に違う角度から触れることによって、気づくことができました。

 それから、私は方言はどんな形であっても相手の心やその地域の独特の雰囲気を感じることができたならば、それは方言なのだと考えるようになりました。また、「めんそーれ」だけが温かい方言なのだということではありません。どこのどの地域の方言でも、同じようなことが言えると思います。

 世界でグローバル化が進んでいるとはいっても、方言はまだ人々の心の中にあり、生活の中に生きています。私たちは温かい方言、日本の歴史の中で築きあげられた貴重な言葉を守る義務があると思います。それは、方言を記録として残し、歴史として風化させるのではなく、生きた言葉として使うことです。私は私の好きな温かい言葉を消さないように方言だけでなく、日頃から温かい言葉で人と接したいと思います。

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