大学ホーム外国語学部一般の方論文・翻訳コンテスト第5回論文「和のこころ」

論文・翻訳コンテスト

和のこころ 福岡県・私立 明光学園高等学校 二年 田中希実

 「和敬清寂」。この言葉は、「茶の心」を表わしたものです。もともと、茶道は唐の時代の中国から伝わったと言われています。そしてそれは、抹茶を「飲み楽しむ」ことに様々な文化が加わって発展しました。

 最初に紹介した、たった漢字四文字の言葉には、それぞれ意味があります。「和」は「お互い仲よくすること」、「敬」は「お互い敬いあうこと」、「清」は「見た目だけでなく心の清らかさのこと」、そして「寂」は「どんなときにも動じない心のこと」。茶道は、こうした精神を基本として、客を招き、心をこめたもてなしをすることが大切なのです。

 現代の社会は、日々が慌ただしく、ゆったりとした時間を過ごすことが少なくなったように感じます。私は、この「和敬清寂」という言葉は、こういう忙しい時こそ必要な言葉だと思います。少しでも自分の時間を見つけ心を落ち着かせることはとても大事なことだと思うし、そうすることでまた頑張ろうという気持ちが生まれると思います。この言葉はそんな力をもっています。そしてまた、人とのであいにおいてもそうだと感じます。「お茶を一服いかがですか」という言葉が人の心にも落ち着きを与え、そこからゆっくりとした会話が始まります。

 そしてもう一つ、伝えたい言葉があります―「一期一会」。私は初め、この言葉は茶道から来たものとは知りませんでした。「人との出会いを一生に一度のものと思い、相手に対し、最善を尽くす」という言葉だそうです。もしかしたら、もう二度とない出会いかもしれない、と思う心や、お客さんに対する感謝の気持ちを伝えることの大切さを感じさせる言葉だなぁと思いました。

 このような日本の文化を、外国と対比してみると、「お茶」つながりで、イギリスの紅茶が思い浮かびました。イギリスには、一日に七回紅茶を飲むという習慣があります。紅茶を飲んで、ゆったりとした時間を過ごしていて、すごく素敵な文化だなと思いました。このように他の国にも、それぞれ独自の文化があってそれぞれにすばらしいけれど、私は日本人として、日本の茶道の文化を、ぜひ世界中に知ってほしいと思います。

 私は、中学二年生の時から茶道部に入っています。お点前を覚えるのは、本当に大変ですが、この一つ一つの所作の中にさまざまな意味が詰まっていて、昔から受け継がれている「和敬清寂」・「一期一会」という「和の心」を自分なりに考えながらお点前をしたいと思っています。

 この心は、茶道から発展していき、日常や学校生活の中でも通じる事だと思っています。特に感じるのが、友達との出会いです。もし今の学校に入学していなかったら出会っていない友達もたくさんいて、そう考えると、この出会いを大切にしたいと思うし、感謝しなければいけないと思います。そして、お互いのことを尊重しあい、清らかな心を持つことで、平和な世の中になっていくと私は思っています。一服のお茶から、様々な安らぎ・静寂がうまれます。お茶から生まれる心は、まさに現代の世の中に発信すべき心だと思います。裏千家前家元・千大宗匠は「平和の大切さを提唱して、千利休が五〇〇年前に確立した茶道の精神は争いの絶えない現在の世界を平和に導くことにも通じる。一杯のお茶をすすめあい、たがいに手をとりあう優しい心が平和へとつながる」と言っています。このように、日本の昔からの文化は若き私たちが大切にし、伝えていくべきものであると思っています。

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