大学ホーム外国語学部一般の方論文・翻訳コンテスト第5回論文「外国人に紹介したい日本の魅力」

論文・翻訳コンテスト

外国人に紹介したい日本の魅力 青森県立 八戸高等学校 一年 松橋和大

 世界に誇れる日本の魅力とは何だろう。食文化や優れた加工技術、世界遺産もあるが、私はそれらのなかで、「剣道」をとりあげたいと思う。

 それは「剣道」の中に日本人らしさが詰め込まれていると思うからである。礼に始まり礼に終わる。この当たり前の作法が、日本人全体の人格をある程度形成していると思う。現在の礼儀作法が確立されたのは明治時代から大正時代なのだが、それには江戸時代からの精神も受け継がれているだろう。それを日本人は、もっと誇るべきだと私は思う。しかしながら、事実、多くの日本人が「剣道」についてまるで知らないか興味がない。それぞれの国に、誇れるようなスポーツの起源がある訳だが、日本人は意外と剣道に関しては受身なところがあると思う。それは自分の国の文化を知らないということであって、そうなってくると外国からも正しくは理解してもらえないはずである。まず剣道について誤解されているところがいくつかある。第一に、剣道とは肉体の鍛錬が目的ではない。むしろその逆、剣道とは精神の鍛錬が本来の目的に近い部分がある。本来ならば殺し合いの道具であった「刀」が木刀や竹刀に形を変えて、人を活かすものになったのである。殺人剣から活人剣へ、ここまでの発想の転換は、なかなか外国では見られない。第二には、剣道は難しく重苦しいスポーツではないということである。剣道をやっていれば分かるのであるが、剣道をしているときには、全く使わない筋肉というものがあって、大きなところでは腹筋は全く使わない。剣道をするための必要最低限の筋力がつくのみで、強くなるために特別なトレーニングは必要ないのである。故に、年齢や性別を問わず、自由で解放的に練習を行っていくことができる。

 そして日本人の精神と「剣道」を結びつける最大の特徴は、「見極める」ということである。欧米諸国の人々は考えるよりも、先に行動するという前向きで推進力のある性格をしている。それに対して、日本人は行動するよりも先に それについて考えることが多く、非常に安定した性格をしている。悪く言えば行動力や決断力に欠けているといえなくもない。しかし、この性格は「剣道」をするときにとても役に立つ。外国で生まれたスポーツの多くが、鋭敏な反射神経や優れた運動能力を選手に求めるのに対し、剣道では、相手の動きを見極め、無駄のない動きをすることが求められる。これは前述した、考えるよりも先に行動、では達成できない。日本人の「剣道」離れには欧米化が一つの原因として考えられるが、日本人の精神の根底にあるのはやはり、「剣道」由来の「見極める」なのだ。

 日本人をはじめ外国人までも異文化に興味を抱き、憧れ、取り込もうとしているのには、自分の文化と内部構造が全く異なっているからである。「行動」する外国人、「考える」日本人。これらを踏まえて再度考え直したい。

 世界に誇れる日本の魅力とは何だろう。「剣道」の目的からくる「見極める」、そしてそこから見えてきた「考える」日本人。世界から見れば二千年あまりという短い年月で生み出された日本文化であるが、その一つ一つには日本人らしい時間のかけ方がなされている。現在では廃れようとしている日本の貴重な文化が世界から評価されはじめ、私たちは自分たちの文化を見直す機会が与えられた。私は剣道をやりながら、日本人は自分たちの文化をもっと誇りにしてもいいのではないかと思いはじめた。

 自分の国の文化を大切にしていなければ、その文化はいつか消えてしまうものである。食や建築物は日常に溶け込んでいて分からないかも知れない。だからこそ、自分の国の文化を守り伝えていくために、「剣道」をはじめとする、身近ではない伝統を知る必要があるのだと思う。日本には、まだまだ外国に知ってもらいたい、誇れる文化が残っているのである。一人一人が日本の文化を見直すことで日本はさらに誇れる文化が増えていくのである。

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