論文・翻訳コンテスト

中国語課題 → 日本語訳 埼玉県・私立秀明高等学校　一年 大地道旭

今から二十年以上前のことである。当時僕は中学に進学したばかりだった。
ある日の放課後、家に帰る準備をしていた時、突然李青という生徒が急に大きな声で「あれ、僕の万年筆がない！」みんなびっくりした。彼は泣きそうな顔で「あれはまだ新品で夏休み中ずっと草刈して稼いで買ったものなんだ、持っていった人早く返してよ！」
ちょうど先生がやってきたので、先生はみんなに自分の席に戻って李青の万年筆が間違って自分のかばんに紛れ込んでいないかどうか調べるように指示した。
僕達は自分のかばんを開け、文房具をすべて机の上に広げた。李青は座席を順番に見て回った。そして、僕の前に来た時、彼の目が一瞬光り、僕の万年筆をさっと取り上げて、「あった、これだ！」と大声で叫んだ。その時、クラス全員の視線が一斉に僕に向けられた。僕は慌てた。これは間違いなく僕の万年筆なのに、何で彼はそういう風にいうのかな？彼は勘違いをしている。この万年筆は僕のものだ。僕が中学受験に合格した時に、都会で働いている叔母がわざわざ僕にプレゼントしてくれた物なのだ。でも僕がその事を言っても、誰も信じてくれなかった。みんな僕の言っている事は全て作り話ででたらめだと思い込んでいる。結局、僕の万年筆は李青に堂々と持っていかれてしまった。僕は取り上げられた上に、クラスのみんなに泥棒呼ばわりされた。僕は濡れ衣を着せられ、本当に泣きたかったが、心の中から湧き上がる怒りを抑え、泣かなかった。泣いても、芝居をしているとしか思われないからだ。この事件は、すぐに忘れられていったが、僕の心の中に深い陰を落とし、その後もずっと引きずっていった。時は流れ、もう中学を卒業する時期になった。卒業式の日、李青は突然僕を呼んで、一本の万年筆を渡してくれて、申し訳なさそうに言った。「君の万年筆を返します。あの日のことは確かに僕の勘違いでした。本当にすみませんでした。」彼は万年筆を自分のかばんのポケットの中に入れてあったということを、夜には気づいていた。しかし、わざと僕に罪をなすりつけた、といわれるのが怖くて言い出せずにいた。その事件はずっと彼の心に重石のように圧し掛かっていた。そしてついに、勇気を振り絞って、やっと告白し、許してもらえるよう頼んできた。僕は、胸の中でぐっとこみ上げる物をこらえ、さりげなく言った。「気にすんなよ。」