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埼玉県警察科学捜査研究所で所長をされている山本靖久氏(臨床検査技術学科7期生)にインタビューしました

2023年06月05日

埼玉県警察本部刑事部科学捜査研究所の所長である杏林大学保健学部臨床検査技術学科7期生の山本靖久氏にインタビューしました。科学捜査研究所は、科捜研の略称で呼ばれ、都道府県警察本部の付属機関(東京都は警視庁、他は道府県警察本部と称します。)であり、捜査部門からの依頼に基づいて犯罪現場で採取された各種試料を科学的に分析し、各種鑑定を行って犯罪捜査に貢献しています。

Q1. 山本所長は臨床検査技術学科の卒業生ですが、そもそも臨床検査技師を目指したきっかけはなんですか?

 元々は法学部を志望する読書好きの文系高校生でしたが、血液型に関する授業を受けて血液検査に興味を持ったことがきっかけです。その後、血液検査や生化学検査について学べる杏林大学の臨床検査技術学科に進学することになりました。

Q2. 科捜研に勤務しようと考えた理由はなんですか?

 高校生の頃に法学にも興味を持っていたことが関係しています。臨床検査について学びを進めていく中で、検査技術と法学の交差点に「法医学」という分野があることを知り、関心を持ちました。しかし、「法医学」は医師の範疇であり、その仕事をサポートすることのできる仕事の一つに、科捜研がある事を知り、かつ、検査技師の知識が活かせ、社会に役立てることのできる科捜研を志すようになりました注1

注1: 山本所長は臨床検査技術学科の卒業生として初めて科捜研に就職をした卒業生です。その後、複数の卒業生が科捜研に就職をしています。山本所長が所属する埼玉県警科捜研にも他に1名の卒業生が在籍し、現在も活躍中です。

Q3. 科捜研の仕事のやりがいはなんでしょうか?

制服を着た警察官とは異なり、科捜研の仕事は皆様の目に触れることはありませんが、科学捜査を通じて「科学の力で社会正義を守る」部門であり、とてもやりがいを感じることができます。また、ありとあらゆる検査技術を応用できる仕事という点でも大変魅力的です。私自身は遺伝子捜査を専門にしてきましたが、いくつか犯罪捜査の中で決定的な証拠を提供することができました。また、ウイルス学や寄生虫学など一見すると犯罪捜査には関係がなさそうな検査技術も犯罪捜査に役立てることができますので、臨床検査科学の可能性を日々感じることができる点も魅力です。

Q4. 科捜研で勤務するにあたって杏林大学での学びは活かされましたか?

 杏林大学では検体検査注2から生理機能検査注3まで検査全般について、各分野の専門家から幅広く学ぶことができましたが、この「幅広い医学知識」が科捜研での業務にとても役立っています。これは私の実体験ですが、ある捜査現場で米粒大の小さな組織片が採取されましたが(それがヒトの組織であるのかということも含めて)どういった組織かその場では見当がつきませんでした。しかし、病理学を学んでいた私は、その組織片から作成した切片を顕微鏡で観察して、何の組織片であるのか同定することができました。科捜研には理学部、工学部、薬学部など様々な学部出身者が在籍していますが、臨床検査技師の持つ他にない専門性は非常に価値の高いものだと感じています。

注2 人体から採取した血液や尿、組織などから行う検査を指す。検体検査には一般的な生化学検査から微生物学的検査、遺伝子検査など様々な検査が含まれる。

注3 患者さんの体から直接情報を記録して行う検査を指す。生理機能検査には心電図検査、脳波検査、超音波検査など様々な検査が含まれる。

Q5. 学生時代にどのようなことを学ぶことが重要ですか?

科捜研に就職することを前提とした場合になりますが、先にも述べたように臨床検査技師の知識や技術は、その全てが犯罪捜査に活かすことができますので何でも一生懸命に学ぶことが大切です。その中でも特に私が重要だと考えていることは検査の方法をただ暗記するのではなく、検査を原理から理解することです。なぜなら、医療機関で行われる検査では必要十分な量の検体を得ることができますが、犯罪捜査で扱う検体は血液一滴分程度であることも珍しくなく、その微量な検体から裁判で証拠として扱える信頼性のあるデータを得なければなりません。そのためには、様々な工夫が必要不可欠です。しかし、検査を原理から理解していなければ工夫をすることは不可能です。従って、まずは解剖学、生理学、生化学といった基礎医学についてしっかりと学び、基礎医学の言葉を使って検査を説明できることが重要だと考えます。

Q6. 杏林大学の在校生や入学を考えている受験生の皆様にメッセージをお願いします

 科捜研に興味のある在校生や受験生の皆さん、杏林大学における臨床検査技師養成課程を通じて学ぶことができる学問は医療現場だけでなく、科学捜査にも役立てることができます。科捜研では複数の杏林大学OBが活躍しています。興味のある方はぜひ、科捜研を就職先の一つとしてお考えいただければ幸いです。

山本所長がご卒業された臨床検査技術学科についてもっと知りたい方は >>こちらをクリック<<

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