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保健学研究科修了今井さん 鼻腔の細菌叢が「鼻」と「脳」をつなぐ?~好酸球性副鼻腔炎に伴う鼻腔細菌叢と海馬の炎症性変化の関連を発見~

2026年09月10日

 保健学研究科臨床検査・生命科学分野の博士課程前期を卒業した今井龍一さん(指導教官:石井さなえ教授)が在学中に取り組んだ研究が、2026年9月3日、国際学術誌Frontiers in Immunologyに掲載されました。
 本研究では、好酸球性副鼻腔炎マウスモデルを用いて、鼻腔細菌叢、腸内細菌叢、脳の炎症性変化を解析し、それらの関連を明らかにしました。

研究のポイント

・マウスの鼻腔細菌叢は、腸内細菌叢とは大きく異なる構成を示すことを明らかにしました。
・好酸球性副鼻腔炎マウスモデルでは、鼻腔細菌叢および腸内細菌叢の構成が変化することを明らかにしました。
・好酸球性副鼻腔炎マウスモデルでは、脳の嗅球と海馬において炎症関連遺伝子の発現が増加し、軽微な神経炎症が生じている可能性を示しました。
・鼻腔細菌叢の変化と海馬の炎症関連遺伝子の発現変化との間に関連が認められ、鼻腔細菌叢が「鼻」と「脳」をつなぐ要素となる可能性が示されました。

研究内容

 鼻腔は外界に曝されており、ウイルスや花粉などによって炎症を起こしやすい場所です。鼻腔の炎症は単なる鼻の疾患にとどまらず、嗅覚障害や睡眠障害に加え、うつ病や認知機能低下などとの関連も報告されています。近年、鼻腔炎症の病態形成に、鼻腔に棲息する細菌叢が関与している可能性が示唆されていますが、鼻腔炎症、鼻腔細菌叢、脳の変化の関連については、まだ明らかではありません。また、鼻腔細菌叢は腸内細菌叢に比べて知見が少なく、動物の鼻腔細菌叢についてはさらに報告が少ないという現状があります。そこで本研究は、好酸球性副鼻腔炎モデルマウスを作製し、同じマウスの鼻腔細菌叢、腸内細菌叢、脳の遺伝子発現を調べ、それらの関連について統計学的に解析しました。

 まず、鼻腔細菌叢と腸内細菌叢の細菌構成を比較した結果、両者の細菌構成は大きく異なることがわかりました。また、腸内細菌叢は多様性が高く個体間の違いが比較的小さい一方、鼻腔細菌叢は個体差が大きいという、それぞれ異なる特徴を持つことがわかりました。

 次に、好酸球性副鼻腔炎マウスと対照マウスを比較すると、鼻腔細菌叢だけでなく、腸内細菌叢の細菌構成も有意に変化しました。さらに、鼻腔の炎症が脳に及ぼす影響を調べるため、嗅覚に関係する嗅球と、記憶、学習、情動などに関わる海馬について解析しました。その結果、好酸球性副鼻腔炎マウスでは嗅球・海馬においてグリア細胞マーカーの発現が増加し、海馬では炎症関連遺伝子の発現も増加しました。これらの結果は、特に海馬で軽微な炎症反応が生じている可能性を示しています。

 最後に細菌叢の変化と脳内遺伝子発現の関連をMaAsLin2という統計解析手法を用いて解析しました。その結果、鼻腔細菌叢の構成変化と、海馬における炎症関連遺伝子の発現変化との間に関連が認められました。したがって今回の結果から、鼻腔細菌叢が鼻腔炎症と脳の変化をつなぐ要素の一つである可能性が考えられます。

 これまで主に「腸内細菌叢-腸-脳」の関連について研究が進んできましたが、本研究は「鼻腔細菌叢-鼻腔-脳」という新しい視点を提示するものです。今後、鼻腔細菌叢の変化がどのような経路を介して脳に影響するのかを明らかにすることで、鼻腔炎症と脳機能の関係の理解が進むことが期待されます。

論文情報

掲載誌:Frontiers in Immunology
 論文タイトル:Dysbiosis of nasal microbiota associated with hippocampal neuroimmune alterations in a mouse model of eosinophilic chronic rhinosinusitis
 著者:Ryuichi Imai, Yuzuki Sugimoto, Takako Osaki and Sanae Hasegawa-Ishii
 出版日:2026年9月3日
 DOI:10.3389/fimmu.2026.1811570

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