心臓血管外科先進的な医療への取組み

1. ステントグラフトによる大動脈治療
胸部および腹部大動脈瘤、または、解離性大動脈瘤に対し、カテーテルにてステントグラフトを挿入/留置することにより、大動脈瘤破裂の回避、または、偽腔の血栓化によるaortic remodeling促進を目的として行なっています。
この治療は、開胸または開腹を必要とせず、また、人工心肺を使用しないことにより低侵襲的治療方法です。
また、解剖学的に大動脈分枝に動脈瘤が位置するケースにおいても非解剖学的バイパスを行い(debranching)、ステントグラフト治療を行なっています。

2. 異種生体組織を用いた感染性大動脈疾患への治療
感染性大動脈瘤、または、人工血管感染に対し、生体素材に近く、かつ、感染抵抗性に優れている異種生体組織(Xenograft)を用いて感染性大動脈疾患の治療を行なっています。
また、形成外科と提携し、積極的に外科治療を行い良好な成績を得ています。

3. 赤外線凝固装置(Infra-red coagulator / Kyo-co®)による治療
赤外線を用いた新たな熱凝固装置としてKyo-coを開発。
この装置を用いて、(1)不整脈、(2)感染性疾患、(3)腫瘍に対し治療を行なっています。
この装置による治療は、心臓血管外科領域のみならず他臓器領域の疾患に対する臨床応用の可能性が多分に含まれており、現在、研究が進められています。

4. 大動脈手術時の脳保護法
大動脈手術時の臓器保護法として、現在、選択的分離脳灌流法と逆行性脳灌流法が広く行われている。
当院では、逆行性脳灌流法を改良し、より脳保護効果を改善させた間歇的圧増強−逆行性脳灌流法(IPA-RCP)を行なっている。圧増強により脳灌流の分布を是正し、また、圧増強を間欠的に行うことにより脳浮腫を回避することができる。
この脳保護法により、大動脈手術の優れた結果を得ている。

5. 低侵襲冠動脈バイパス術
人工心肺使用心拍動下、冠動脈バイパス術を施行しています。この術式は、人工心肺を使用することにより不安定な循環動態を有するケース、または、解剖学的に困難な冠動脈病変を有するケースに対しより安全に手術を遂行することが可能であり、かつ、心拍動で行うことにより心負荷が軽減されます。
中枢側吻合に対して自動吻合器を使用し、手術時間の短縮を行なっています。

6. 血液透析用シャント
自己の動静脈による内シャント作成が困難なケースに対し、新しい人工血管による内シャント作成を行なっています。
また、シャント静脈、または、in-flow動脈の狭窄に対し、カテーテルによるバルーン拡張術、または、ステント留置を行っています。

7. 閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症に対し手術のみならず、低侵襲治療であるカテーテルによる血管拡張術、または、ステント留置術を行っています。
また、下腿3分岐以下の末梢病変に対し自家静脈を用いたdistal bypassを積極的に行い良好な成績を得ています。

8. 下肢静脈瘤に対するレーザー治療
下肢静脈瘤に対しケースに応じてレーザー治療を行い、低侵襲化、および、入院日数の短縮に努めています。