病院・診療科について妊娠中のサプリメントについて

 外来で妊婦さんから、サプリメントについて聞かれる事が良くあります。そもそもサプリメントとは栄養補助食品とも呼ばれ、普段の食生活で補えない栄養素を補うための食品です。 決して薬ではありません。普段からバランスに気を付けて食生活を送られている妊婦さんならば、無理にサプリメントを使用する必要はありませんが、妊娠中は赤ちゃんの発育のために必要な栄養素の摂取を気にされる方が多い様です。 実際に約75%の妊婦さんは何らかのサプリメントを使用しているそうです。では妊娠中に足りなくなりやすい栄養素は何でしょうか。

不足しがちなカルシウム、鉄

 ちょっと前のデータですが2003年の日本人妊婦に不足している栄養素は、エネルギー、カルシウム、鉄とされています。エネルギー不足は赤ちゃんの発育に関わりますが、食事のカロリー量を適切に取る事が重要です。いわゆるビタミンやミネラルと呼ばれサプリメントに含まれる栄養素としてはカルシウム、鉄になります。 共に赤ちゃんの身体を作るのに重要な栄養素ですし、母体も不足することによって骨粗鬆症や貧血が起こってしまいます。

中枢神経の形成に大切な葉酸

 またWHOは葉酸欠乏が赤ちゃんの中枢神経の異常に関係するとされているために妊娠中の摂取を推奨しています。 ただし気を付けなくてはいけない事は、赤ちゃんの中枢神経が作られるのは妊娠6週までとされていますので、妊娠がわかってから葉酸を取っても遅い事があります。つまり妊娠を計画した頃から葉酸を取らなくてはいけません。
 実は天然由来の葉酸は吸収率が悪く、合成の葉酸の方が効率的です。 葉酸の推奨される摂取量はモノグルタミン酸型葉酸で400ug/日となり、食事や天然由来では摂取する事が難しい量となります。 天然由来の方が身体に良い印象を持ちますが、世界中では合成型の葉酸摂取が推奨されています。

 

バランスの良い食事にプラス

 

 この様に妊娠中にサプリメントで取るべき栄養素は、カルシウム、鉄、葉酸が考えられます。サプリメントは医薬品ではなく食品として扱われるため、その品質管理、体への吸収の良さ、安全性等には規定がありません。
 そのため、鉄等はほとんど吸収されないサプリメントもあるとされています。またマルチビタミンの場合、ビタミンAの過剰摂取は赤ちゃんへの影響が危惧されており、注意が必要です。あくまで補助食品という意味で、食事のバランスと合わせて考えて頂きたいと思います。



2021年1月
杏林大学医学部付属病院 産婦人科 准教授 田嶋 敦