重要なポイント(シリーズ630-1-2.sidero

 

 解説・特殊染色の方法とその読み方」

                 杏林大学保健学部 臨床血液学(教授) 中竹 俊彦

 この解説の次に,パワーポイントで特殊染色は(シリーズ630)に提示しています。

シリーズ630-1-2-sidero

II.鉄染色1)

 

II-1.原理

 細胞内ヘモシデリン,フェリチンなどの非ヘム鉄(3価の鉄)は,塩酸酸性下で解離してフェロシアン化カリウムと結合し,不溶化(ベルリン青を生成)します.前者は粗大顆粒〜微粒子状に,また後者は瀰漫性・均一に青染します .

II−2.背景

 鉄染色は小球性低色素性貧血の原因(鉄代謝の病態)の検索において特に有用性が高いものです.鉄欠乏性貧血は総鉄結合能の高値,血清鉄低値,殊にフェリチン低値で鑑別できるので,骨髄検査や鉄染色で貯蔵鉄減少を確認する必要性は低いものです.

 しかし重要なのは,赤血球の二形態性(2相性ともいう:正赤血球と小球性低色素性赤血球の2種が混在するMDSなど病態)の場合に組織球の鉄貯蔵が過剰なので,鉄欠乏性貧血と好対照です.

 鉄欠乏(前者)では組織球に鉄は認められないのです.MDSなどでは組織球に鉄は過剰なほどあり,輪状鉄芽球(ringed sideroblast)が指摘されます(鉄芽球性貧血).これは異常をきたした特定の赤芽球系だけヘモグロビン合成障害が発生しているため,赤芽球系は部分的な低色素性です.また,二次性鉄芽球性貧血の原因として,抗結核剤(INH)の服用者では,ときにヘモグロビン合成ルートで殊にヘム合成酵系(ALA合成酵素の補酵素)が阻害され,やはり輪状鉄芽球が証明されますが,リン酸ピリドキサール(活性型VB6で適切に治療されるピリドキシン反応性貧血と同様に改善されます.該当する抗結核剤を中止または変更すれば,薬剤副作用を避けられる点で重要な例です.

 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)では溶血性貧血でありながら貯蔵鉄が著減していることが特徴です.その背景は,尿沈渣のヘモシデリンとなった鉄喪失が鉄欠乏の原因です.骨髄異形成症候群(MDS)では特に輪状鉄芽球を伴った鉄芽球性貧血(RARS)という病態があります.

 

II-3.方法:

(鉄染色の方法については後段に「実技編」または

,630-2-2-2.sp.st.Sidero.tech.lecture. あるいは 630.BM.Wld(PP)(PPシリーズでも提示)」からご参照ください).

 

文献

1)中竹俊彦:骨髄鉄染色法と臨床的意義 検査と技術 31(8)687-6922003

(参考資料)

1.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(1)

2.中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(2)‐リンパ球を追う‐

3.中竹俊彦:マルクマスター,ブラストマスター(ともに,CD-ROM教材)

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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