病院・診療科について花粉症の時期や症状、治療について

花粉症とは

 我々人間は基本的に鼻呼吸をしています。鼻呼吸をすることによって吸気の加湿、加温、除塵などが可能となり、きれいな空気を肺に送り込んでいます。 空気中にはウイルス、細菌、カビや排気ガスなどの有害物質、そしてハウスダストや花粉も含まれるために、鼻の中での免疫機能が働いて体を防御する働きもあります。 アレルギー性鼻炎は、吸入する原因物質(抗原と呼ぶ)がそれほど悪い影響を及ぼさないにも関わらず、鼻の粘膜で過剰な免疫応答が働く病態であり、発症する時期により通年的に症状のある通年性(ハウスダスト、ダニ、カビ、イヌやネコの毛やふけ)とある季節にのみ発症する季節性(主に花粉)に分けることができます。
 スギ花粉症はダニやカビ、その他の花粉を含めた原因抗原によるものと比較して、症状が大変強いことが知られており、さらに年々スギ花粉症の患者さんは増加しています。
 現在日本人の2.5人に一人が罹患していると報告されていますが、発症年齢が10歳代から50歳代に多く、学生の勉強やスポーツ、社会人の仕事の効率の低下などを含めた日常生活の質の低下を招くために社会的な問題にもなっています。

花粉症の時期について

 国内での花粉症といえば、関東地方では主に、1月から4月末に飛散するスギ花粉が原因のアレルギー性鼻炎、スギ花粉症があります。4月から5月にかけてのヒノキや4月から7,8月にかけてのイネ科植物(カモガヤ、ハルガヤ)、その後秋にかけてのキク科(ブタクサ、ヨモギ)などによる花粉症なども存在します。 これらの花粉の複数がアレルギー性鼻炎の原因となってしまうと季節性ではなく、通年的に症状が出る場合もあります。

 

症状について

 

 スギ花粉症は、アレルギー性鼻炎における3主徴の発作性反復性のくしゃみ・水性鼻漏・鼻閉の症状に加え、鼻のかゆみ、のどのイガイガ、アレルギー性結膜炎としての目のかゆみなど花粉症候群として様々な症状を引き起こします。 欧米での主な花粉症はブタクサなどの雑草であり、俗にhay fever (枯草熱)と呼称することもありますが(現在一般的ではありません)、日本での花粉症により実際に発熱を伴うことはほとんどありません。鼻閉、その他の症状から体がだるく“熱っぽい症状”になることや微熱が出る方もいるようです。

病院に行くべき? 何科にいけばいい?

 

 受診する診療科は、診察の際に鼻の中を観察することが可能であり、手術的も治療の選択肢として可能な耳鼻咽頭科が望ましいです。

花粉症の検査について

 

 花粉症の主な検査は、皮膚テスト、血液検査、鼻粘膜誘発テストなどがあります。
 その中で一般的なものは採血により患者さんの血清を用いて、代表的な吸入抗原(上述)に対する特異的IgE抗体の上昇の有無を見るものです。これは一回の採血で10種類あまりの代表的な吸入抗原の中で、どの物質が原因となっているかが判明出来る可能性があります。しかしながら、この検査での陽性は感作の有無(症状発症の準備段階の有無)をみているので実際に発症していない場合もありえます。
 皮膚テストはコストが安く、短時間に結果が出るということが優位な点ですが、検査前に抗アレルギー剤の内服の制限や検査に少し痛みを伴うこともあります。また、稀に全身反応(アナフィラキシー)が生じることもあり得ます。他に鼻粘膜誘発テストは一般的な外来ではあまり施行いたしません。
 このような検査に加えて実際に発症しているかどうかの参考として、血中や鼻汁の好酸球数が増加していることを調べることもあります。そして、これらの検査とともに患者さんの症状や発熱の有無、鼻咽頭粘膜の所見、鼻汁の性状から、風邪症状なのかアレルギー性鼻炎なのか等の診断をいたします。実際に上記検査はコストがかかり、結果までに時間を有することもあるため、主に初診時やこれまでにアレルギー性鼻炎の症状がなかった患者さんに施行します。

予防・治療について

 

 これからスギ花粉症の発症時期を迎えますが、予防・治療の基本は、原因となるスギ花粉を回避、除去することです。マスクやメガネなどで防御することや外出からの帰宅時には、着用している衣類を払うなどの工夫も効果があります。その中で、最近患者さんから大変喜ばれている方法は、“鼻のうがい”です。最初は市販のものをお買い求めいただき、一日2~3回、鼻を洗浄すると、鼻の中の花粉は洗い流され、インフルエンザや現在問題となっている新型コロナウイルスなどの感染予防にもなります。 溶解する顆粒などがなくなったら、500ccの 人肌のお湯に小さじ一杯の塩を入れたものを初回に購入された容器にいれて洗浄すると、コストの面でも都合が良いです。
 他に薬物による一般的な対症療法、根本的に花粉症状を引き起こさないように体質改善を目的とする免疫療法、そして手術的治療等があります。薬物の種類も様々であり、眠気の副作用の出るものもあります。スギ花粉症のみに対して、この季節に注射をする治療も可能となり、IgE抗体が適応となりました。(ステロイドではありません。)皮下や舌下免疫療法は、その内用をしっかりご理解していただいたうえで、3年から5年と長期間の治療となります。手術治療の組み合わせも、局所麻酔下で施行するものから全身麻酔下に施行するものがあり、症状や鼻の形態によって異なります。
 杏林大学病院耳鼻咽喉科では、上記の治療の中で患者さんに最も適しているものをご相談しながら選択いたします。そして、ご希望に応じて施行しています。毎年この季節に花粉症状でお悩みの患者さんは、当院にご相談ください。

2021年1月
杏林大学医学部付属病院 耳鼻咽喉科・頭頸科 准教授 横井秀格