研究/研究テーマ

研究テーマ bookmark

メンバーが行っている主な研究テーマをご紹介します。

腸管における杯細胞の多様性に関する組織解剖学的研究 bookmark

シングルセルRNAシークエンス解析をはじめ,近年の基礎研究技術の発達により,各臓器・組織の上皮を構成する個々の細胞種は,さらに性質・役割が異なる複数のサブタイプに分別できることが指摘される。このような上皮細胞の多様性は生理状態における臓器・組織のはたらきと,疾病の病因・病態に深く関連することが予想される。さらにそれらの理解を深めるためには,「性質・機能が異なるサブタイプが組織中,どのように分布するか」,そして,「その組織分布が,上皮の機能とどのように関連するか」,という組織解剖学的な理解のアップデートは不可欠である。

腸管の杯細胞は,性質・役割における違いがなく,比較的均一な細胞集団として理解されてきた。しかし,このような状況を踏まえ,杯細胞の多様性に関する研究を進めている。ムチンタンパク質の分泌は,杯細胞が担う主要な役割である。当教室における研究から,糖鎖修飾の異なるムチンタンパク質を産生する大腸杯細胞のサブタイプを特定した。このような杯細胞サブタイプの大腸近位-遠位軸に沿った組織分布の違いが,腸内細菌の制御を通じ,腸管の恒常性維持に深く関与することを明らかにしたいと考えている。組織細胞化学的手法に加え,糖鎖及び糖鎖生合成関連分子の解析法も駆使し,研究を進めている。(菅原

精細管上皮周期、精上皮の波の形成機構 bookmark

精子発生は、精巣の精細管で起こる。その上皮には、精子発生の進行に伴って周期的に変化する「精上皮周期」が観察される。この精上皮周期は、精細管に沿って少しずつ段階がずれるように配列していて、それが波状に繰り返される「精上皮の波」として知られる。

私達は、精上皮の波が自然にできるのではなく、男性ホルモンをはじめとする精巣内の液性因子によって調節され、その調節が加齢とともに変化することを、マウスを使って明らかにした。どのような情報伝達が行われているのか、調節が正常に行われるのに必要な要素は何かについて、精巣内での精細管の立体配置と、液性因子の分泌細胞、標的細胞との関連について追求している(宮東

下垂体前葉の多ホルモン分泌細胞の性質とその分泌調節 bookmark

下垂体前葉には、数種類の下垂体前葉ホルモンを分泌する細胞が混在している。ホルモン分泌の急激な増加時には、通常は主に1種のみのホルモンを分泌している細胞から、他のホルモンが分泌されるようになる現象の解析から、下垂体では、1つの細胞が多種類のホルモンを分泌する現象が、普遍的であることがわかってきた。この多ホルモン分泌細胞の動態を調べ、ホルモン同士の分泌調節、多ホルモン分泌細胞の分化の様子について検討している。(宮東

癌転移過程における血小板と糖鎖の関与 bookmark

癌転移が成立するまでの多くのステップの中で、転移先臓器の血管と癌細胞との相互作用の段階に注目し、癌細胞表面の糖鎖発現パターンの差や、流血中の血小板との反応性の差が重要な役割を担っている可能性について、マウス大腸癌の肝転移モデル系を用いて解析している。(川上)

糖尿病における O-GlcNAc 及び O-GlcNAc 転移酵素の機能解析 bookmark

近年 O-GlcNAcと呼ばれる糖を修飾された蛋白質が核や細胞質に存在することが、明らかになった。この O-GlcNAc は、翻訳後修飾機構の一つであり、シグナル伝達に関与していることが明らかにされつつある。私達は、O-GlcNAc を蛋白質に付加する糖転移酵素(O-GlcNAc transferase)並びに O-GlcNAc が膵臓、とりわけランゲルハンス島に多量に存在することを免疫組織化学的に見い出した。このことから O-GlcNAc は血糖の調節に関与することが推測される。現在、ヘキソサミン代謝系における O-GlcNAc に注目し、O-GlcNAc と糖尿病との関係についての基礎的研究を行っている。(秋元

細胞外マトリックスの組織細胞化学的検討 bookmark

細胞外マトリックスの解析では、特に基底膜に注目し、その主要な構成成分であるコラーゲン分子やガレクチンなどのそれぞれの役割について、分子生物学並びに組織細胞化学的解析を行っている。(秋元

皮膚の発生における Homeobox 遺伝子の機能解析 bookmark

ニワトリ胚やマウス胚の皮膚を過剰量のビタミンA存在下で培養すると表皮の粘液化生を生ずる。この粘液化生や角質器(羽毛、ウロコ、毛)の発生における homeobox 遺伝子の役割について解析を行っている。(秋元

プラズマ照射による組織、細胞への影響の分子形態学的解析 bookmark

新学術領域「プラズマ医療科学の創成」の研究において、これまで先行して行われた共同研究者の池原 譲先生(産総研)によって、プラズマ止血は組織学的に、膜状構造物を形成して出血を止め、組織障害が無い低侵襲のものであることが光学顕微鏡レベルで明らかにされた。この結果、この構造物は、湿潤療法による治療効果と相同であると考えられた。これらの知見に基づき、本研究では、さらに、プラズマによる創傷治癒の過程を電子顕微鏡レベルで検討し、さらに糖鎖への影響を、細胞ならびに細胞外基質に存在し、創傷治癒に関与することが知られているガレクチンを指標に検討することにより、プラズマ止血が組織障害が無い低侵襲のものであるかどうかについて超微形態学的に検証している。(秋元