肝胆膵外科先進的な医療への取組み

Ⅰ.ICG蛍光法を用いた系統的な肝切除

 肝細胞癌の治療では肝臓の区域を解剖学的に正確に切除する系統的肝切除が求められます。術前にCT画像を用いてシミュレーションを重ね(図1. 上段)、術前の計画通りに肝臓の区域を切除します。
 肝臓の区域を術中に同定するには、色素を区域の血管内に注入したり、ICG溶液という蛍光発色する安全な薬剤を用いたりしています(図2. 上段)。ICG蛍光法は最近10年間に発展した画期的な方法です。

II. 術前化学療法を用いた膵がん治療

 膵がんの治療では手術のみならず化学療法と組み合わせた集学的治療が求められます。当院では化学療法を専門とする腫瘍内科と協力して治療を進めています。当初、切除が困難と判断された膵がんに対しても化学療法を用いて腫瘍径が縮小したり遠隔転移が長期に渡って消失したりした場合には積極的に切除を行っています。

III. 嚢胞性膵腫瘍の診療

 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)の大規模な全国調査(1379例のIPMNと179例のMCNを集積)を行い、その臨床像と悪性の予測因子を解析しました。その経験から、IPMNやMCN、膵漿液性嚢胞腫瘍(SCN)、充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)などの嚢胞性腫瘍は手術例のみでなく、経過観察例を含めて多数例を診療しています。また、膵体尾部の腫瘍に対しては積極的に腹腔鏡手術を行い、低侵襲化を図っています。

IV. 良性疾患の診療

 肝胆膵良性疾患、とくに肝内結石症や膵・胆管合流異常に対する診断や手術を行っています。
 肝内結石症については厚生労働省の研究班の班員として2000施設をこえる大規模な全国多施設調査を定期的に行い、ガイドラインや重症度判定基準の策定に携わっています。その経験から適切な診療方針をお示しし、外科手術のみでなく、内視鏡治療、経皮経肝的胆道鏡治療(PTCSL)を行っています。

V. がん治療における日本臨床腫瘍グループ(JCOG)やAMED班研究グループ、がん専門病院との連携

1) 肝胆膵外科は腫瘍内科とともに日本臨床腫瘍グループ(JCOG)の肝胆膵部門の臨床研究に参加し、本邦の肝胆膵がん治療の推進に協力しています。
2) 肝胆膵外科は厚生労働省AMED班研究に参加し、国立がん研究センター中央病院、国立がん研究センター東病院、がん研有明病院、東京大学医学部附属病院、静岡県がんセンター、虎ノ門病院、愛知医科大学病院、順天堂大学順天堂医院、防衛医科大学校病院と共同研究を行い、本邦の肝胆膵外科手術の質の向上に努めています。
3) 上記AMED参加病院の肝胆膵外科とは強い連携を保ち、必要や要望に応じて患者さんの紹介を行っています。