耳鼻咽喉科・頭頸科先進的な医療への取組み

先進的な医療への取組みについて

頭頸部がんへの光免疫治療「頭頸部アルミノックス治療」の実施について

当院耳鼻咽喉科・頭頸科では、頭頸部がんへの治療として、光免疫治療を導入しています。 光免疫療法は、手術療法・化学療法・放射線療法・免疫療法に続く“第5のがん治療法”と言われる治療法です。がん細胞だけに付着する薬剤を投与し、正常なヒト組織にはほぼ害を与えない近赤外線の光を照射することで、がん細胞を選んで攻撃する比較的副作用の少ない治療法です。頭頸部がんを対象としたこの治療は、「頭頸部アルミノックス治療」と呼ばれています。
現在は、手術などの方法では治療できない局所進行または再発の頭頸部がんのみが保険適用となっており、施設要件・医師要件を満たした当科でも導入しています。対象は、現在当院で治療を行っている患者さんとなります。
本治療への問い合わせや治療の実施をご希望の方は、まず掛かりつけの主治医から紹介状をお取りください。その後、当科の専門外来で診察し、光免疫治療の適応対象となるか見極めた後、実施することになります。

音声・喉頭疾患に関して

空気力学的検査や音響分析などの声の検査や高速撮影装置(ハイスピードカメラ)を含む内視鏡検査、そして喉頭筋電図を組合せ、音声の科学的分析に基づいた音声の診断・治療を行っている。
また、2017年に世界に先駆けて導入した超高精細CT装置を用い、喉頭・気道の詳細な評価も行っている。(下記「超高精細CTによる咽喉頭・気管の解剖形態学的、運動学的検討」をご参照ください)
治療としては、外来日帰り手術として声帯麻痺や声帯の炎症性疾患などに対する種々の声帯内注入術を行っている他、咽頭・喉頭乳頭腫に対するレーザー焼灼術を行っている。 (下記、「咽喉頭乳頭腫に対する外科的治療効果の検討」「HPV遺伝子型による咽喉頭乳頭腫の治療効果に関する研究」をご覧ください)
また、言語聴覚士や呼吸器内科とも連携して、慢性咳嗽に対する認知行動療法などを活用した治療を試みている。(下記、「難治性慢性咳嗽患者の喉頭運動・感覚機能に関する研究」をご覧ください)
また、献体を用いた頭頸部の解剖に関する研究を行っている。(下記、「頭頸部の肉眼解剖および形態計測に関する検討」をご覧ください)
さらに、喘鳴、無呼吸といった新生児から小児期に認めることの多い症状は、日常診療において経験する症状であるが、先天的な異常によるものや外科的治療を必要とする場合もあり、慎重な診断、治療を要する。そのような患児の情報を共有し、適切な治療が提供できるように、小児科、小児外科、麻酔科の医師や看護師が連携して協議する合同カンファレンスに参加している。(下記、「当科小児気道外来および音声外来を受診した小児患者の診断、治療に関する臨床的観察研究」をご覧ください)

頭頸部腫瘍に関して

患者様の立場に立って「生活の質」を考慮した治療法を選択している。 機能温存手術に積極的に取り組んでいるが、進行癌に対する化学療法、放射線療法も、慎重な判断の元に適応を判断し、行っている。 頭蓋底腫瘍に関しても、内視鏡使用による低侵襲かつ機能温存を目指した手術療法を積極的に取り入れるよう努めている。 特に良性疾患に関してはなるべく審美的に優れた切開で手術を行うことも行っている。 現在耳下腺の良性腫瘍では髪の生え際を切開し創部が目立たない手術(face lift incision, retro auricular incision)を行っており、甲状腺腫瘍に対しても内視鏡下でより小さな創部での手術(内視鏡補助下甲状腺手術:Video-assisted neck surgery, VANS法)も行っている。

鼻疾患に関して

鼻・副鼻腔疾患に対して内視鏡を駆使し最新の低侵襲手術を行っている。 慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、術後性上顎のう胞、副鼻腔真菌症、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、鼻副鼻腔乳頭腫などの易再発性の副鼻腔良性腫瘍や2015年に難病に指定された好酸球性副鼻腔炎に対しても積極的に手術を行っている。 ナビゲーションシステムを用いることにより、難病である好酸球性副鼻腔炎も再発しづらい状態にする手術が可能である。 再発した場合は分子標的薬であるデュピルマブによる治療も行っている。
アレルギー性鼻炎に対しては、薬剤を用いた保存的治療や局所麻酔下での鼻粘膜焼灼術、全身麻酔下での内視鏡下後鼻神経切断術などを状況に応じて行っている。 鼻中隔弯曲症に対しては通常の鼻内法に加え、前弯型や外鼻変形を伴っている鼻中隔弯曲症に対して、鼻中隔外鼻形成術(Open Septorhinoplasty)も形成外科と合同で手術を施行している。

耳科疾患に関して

難治性の慢性中耳炎(真珠腫性中耳炎など)・耳硬化症に対しては、手術療法により、病気の根治と聴力改善を目指している。遺伝性難聴が疑われる患者様に対しては、ご希望があれば遺伝子検査を行った上で、生活指導などをしている。(下記、「難聴の遺伝子解析と臨床応用に関する研究」をご参照下さい。)
難聴、聴覚・平衡覚異常感の診断、治療に関して予防、治療へ活用できるよう様々なデータの蓄積を行っている。(下記、「難聴、聴覚・平衡覚異常感の診断、治療のために入院・通院されていた患者さんの診療情報を用いた臨床研究に対するご協力のお願い」をご覧ください)

嚥下障害に関して

嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査に加えて、高解像嚥下圧検査など多面的に嚥下障害を評価し、その障害に応じた嚥下指導や手術(嚥下機能改善手術・誤嚥防止手術)を行っている。嚥下内視鏡検査と高解像嚥下圧検査を組み合わせた、低侵襲かつ詳細な嚥下機能検査法の開発に取り組んでいる。また、加齢に伴う嚥下機能の変化に関する研究も実施している。

当科で行なっている研究について

  1. アブミ骨筋反射検査陽性のウィルス性顔面神経麻痺症例の予後にかかわる因子の検討(承認番号2305)
  2. 頭頸部の肉眼解剖および形態計測に関する検討(承認番号1571-03)
  3. 難聴,聴覚・平衡覚異常感の診断、治療のため予後因子に関する臨床研究 (承認番号 906)
  4. 難聴の遺伝子解析と臨床応用に関する研究 (承認番号 522)
  5. 難治性慢性咳嗽患者の喉頭運動・感覚機能に関する研究 (承認番号 1239-02)
  6. 超高精細CTによる咽喉頭・気管の解剖形態学的、運動学的検討 (承認番号 1212-01)
  7. 当科小児気道外来および音声外来を受診した小児患者の診断、治療に関する臨床的観察研究(承認番号1698-01)
  8. 咽喉頭乳頭腫に対する外科的治療効果の検討(承認番号1302-01)
  9. HPV遺伝子型による咽喉頭乳頭腫の治療効果に関する研究(承認番号751-01)