杏林大学医学部付属泌尿器科教室 Kyorin University Hospital Urology.

ウイルス療法

臨床試験名

前立腺癌に対するG47Δを用いたウイルス療法

始めに

この臨床試験は、前立腺がんに対する新たな治療法の開発を目的に、杏林大学医学部付属病院泌尿器科で実施します。G47Δ(デルタ)という遺伝子組換え型単純ヘルペスウイルスを用いることから、実施計画は国の指定を受けた認定臨床研究審査委員会(東京大学)に加えて、厚生労働大臣の承認を得ています。なお、このG47Δは、2021年6月に悪性神経膠腫を適応症として製造販売承認されています(一般名 テセルパツレブ、製品名 デリタクト注)。

新しい治療薬の開発は、一般に安全性を確かめるための臨床試験を行い、その後、少数の患者を対象に治療効果を調べる臨床試験、そして多数の患者を対象に治療効果や安全性を検証する臨床試験という順に実施していきます。今回の臨床研究は、2番目の「少数の患者を対象に治療効果を調べる臨床試験」の段階であり、参加されても病気の回復に結びつかない可能性があります。しかし、このような臨床試験が進めば、前立腺がんに対する新しい治療法を確立するために役にたつ可能性があります。

なお、今回の臨床研究は、製薬会社などが行い、厚生労働省から医薬品としての承認を取得するための臨床試験、いわゆる「治験」ではありません。

試験の概略

臨床試験の対象となるのは、転移のある前立腺癌と診断され、まだホルモン療法を行っていないか、開始してから3ヶ月以内の患者さんです。ホルモン療法(アンドロゲン除去療法)と併用して、G47Δが効果を示すかどうかを確かめることが第一の目的となります。そのため、過去に前立腺摘出手術や前立腺に対する放射線治療を行った患者さんは対象となりません。また、内服の新規ホルモン療法薬や抗がん剤を行っている患者さんも対象外となります。

今回の臨床試験は、増殖するウイルスで癌細胞を破壊するという全く新しい方法を試みます。 G47Δという遺伝子組換えヘルペスウイルスを会陰部の皮膚から直接前立腺内に投与します。G47Δのもととなった単純ヘルペスウイルスI型は、口唇に水疱を生じる口唇ヘルペスの原因ウイルスですが、ごくまれに角膜炎や重症の脳炎を起こすことが知られています。単純ヘルペスウイルスI型の3つの遺伝子に組み換え技術を用いて人為的変異を加え、癌細胞だけで増殖し正常組織を傷つけないように工夫したのがG47Δです。 G47Δを癌細胞に感染させると、G47Δが増殖→癌細胞を破壊→増えたG47Δが周りの癌細胞に感染→G47Δが増殖→癌細胞を破壊、を繰り返してがんを縮小させると期待されます。

参加のための主な基準

  • 20歳以上であること
  • 前立腺癌の診断を受けていること
  • 前立腺以外に転移を認めていること
  • ホルモン療法(アンドロゲン除去療法)を行っていないか、もしくは開始してから3ヶ月以内であること
  • ホルモン療法(アンドロゲン除去療法)全摘除術を受けずにホルモン療法を行っている前立腺癌患者であること
  • 新規ホルモン療法薬(内服)や抗がん剤治療を受けていないこと
  • 前立腺摘出手術もしくは前立腺への放射線治療を過去に受けていないこと
  • 1ヶ月以内に他の臨床試験薬の投与を受けていないこと
  • 介助なしに生活できる状態であること