ここでは多発性嚢胞腎の新しい治療について簡単にご紹介します。
厚生労働省の研究班で多発性嚢胞腎の治療に関しての研究が行われています。杏林大学の東原教授は、長くこの研究班の責任者の一人として、多発性嚢胞腎の方の腎機能が悪化しない方法を研究してきました。最近判明したことでは、高血圧が合併すると、腎機能悪化のスピードが増すことがあります。では高血圧を治療したらこのスピードは落ちるのかということになりますが、使用する薬剤によってこの効果に差があることがわかりました。一般に高血圧によく使用されるカルシウム阻害薬という薬と、アンジオテンシンII受容体阻害薬という薬を比較すると、アンジオテンシンII受容体阻害薬を使用した方が、腎機能悪化のスピードが落ちることが判明しましたので、現在では多発性嚢胞腎に合併した高血圧では、アンジオテンシンII受容体阻害薬が第一選択の降圧剤となっています。また、嚢胞の増大を抑制することが高血圧発症と腎機能悪化を抑えることが知られています。
多発性嚢胞腎の治療薬として「トルバプタン」(バソプレッシンV2受容体拮抗薬)は国際的臨床試験が終了し、腎臓の腫大速度を約50%程度緩和することが示され、現在日本では保険適応となってます。