皮膚科「培養自家毛球部毛根鞘細胞を用いた男性型および女性型脱毛症治療」のご案内
この度、杏林大学医学部付属病院が、東京医科大学病院、東邦大学医療センター大橋病院と共に臨床研究を進めてきた、「培養自家毛球部毛根鞘細胞を用いた男性型及び女性型脱毛症治療」を実施することになりました。つきましてはその内容をお知らせいたします。
1.治療に用いる細胞
本治療では、あなた自身の毛包組織にある毛球部毛根鞘(もうきゅうぶもうこんしょう)細胞(DSC細胞といいます)という細胞を培養して治療を行います。
近年、脱毛症の治療を目的とした毛髪再生の研究が進んでおり、毛髪の発育に不可欠と考えられている毛乳頭(もうにゅうとう)細胞の下にあるDSC細胞を培養し、頭皮に移植すると、毛髪成長が促される可能性を示す結果が得られています。DSC細胞は、投与後、毛乳頭に入り込み毛乳頭が大きくなることで効果を発揮すると考えられています。本治療では、脱毛していない後頭部からDSC細胞を採取し、体外で細胞を増やして特定細胞加工物(本治療では「S-DSC®」と呼びます)にしたものを、脱毛部(頭頂など)に注射します。

2.本治療の対象者
以下の条件を満たす方が本治療の対象となります。
- 男性型または女性型脱毛症と診断された成年者
- 他の治療では効果が不十分と考えられた、あるいは副作用等により他の治療が継続できず本再生医療等の効果が期待できる方
- 本再生医療等の提供に関して自身の意思に基づき文書同意した方
- 本再生医療等の開始前に実施するウイルス学的検査(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、成人T細胞白血病ウイルス)で感染が確認された方
- 局所麻酔薬で過敏症の既往歴を有する方
- 妊娠中または授乳中の女性
- 再生医療等を行う医師が対象として不適当と判断した方
3.本治療の流れ(頭皮組織採取から投与まで)
①頭皮組織(DSC細胞)の採取
後頭部の一部を刈毛(約2㎠)、消毒し、なるべく痛みを感じないようにその部分だけ局所麻酔をかけます。皮膚に筒状のメスを使用し、直径数mm程度の頭皮組織を切り取ります。その後、2~3針程度縫い合わせるなどの処置を行い、約2週間後に抜糸します。

②DSC細胞の培養
得られた頭皮組織を、細胞培養加工施設に運び、毛包からDSC細胞を単離し、無菌状態で十分な細胞数に達するまで約3週間かけて培養します。増えたDSC細胞は、品質試験などを経てS-DSC® として凍結保存されます。なお、細胞が増殖しない等の理由で投与に至らない可能性があります。その場合でも、キャンセル料が発生することをどうかご了承ください。

③S-DSC® の投与
凍結したS-DSC® (1バイアル4mL、7本製造のうち、1本~3本)を解凍し、専用の注入器を用いて脱毛部に注射します。
症状の改善状況に応じて、複数回に分けて投与する場合があります。投与のスケジュールについては医師とよく相談して決めてください。

④観察
本治療の安全性及び有効性の確保、あなたの健康状態の把握のため、本治療を受けたのちは定期的な通院と診察にご協力ください。診察の際は頭部の写真を撮らせて頂く場合があります。定期的な通院が困難である場合は、電話連絡などにより経過観察をさせていただきます。
4.本治療の提供により予期される利益及び不利益
【利益について】
男性型及び女性型脱毛症の症状改善が期待できます。現時点でのデータでは、男性は2割、女性は4割の効果です。女性、40代以上、薄毛の進行度が比較的初期段階の方により効果を発揮しました。ただし、治療の効果や効果の持続時間は個人差があります。
【不利益について】
- これまでの臨床研究において、投与部位の紅斑、腫れ、痛み、出血、投与時の緊張に伴う気分不良、投与後の頭痛が認められましたが、いずれも症状は軽く短い時間で回復しています。
- 本治療の手技に関連する不利益については、以下のとおりです。
- 治療前の採血検査:感染症が確認された場合は、治療不可となりますのであらかじめご了承ください。
- DSC細胞採取のための頭皮組織切除:稀ですが、麻酔後の血圧低下や呼吸困難が起こることがあります。また出血や痛み、傷跡が目立つ可能性があります。
- S-DSC®の投与:極細針を使用して痛みを最小限に抑えるものの、通常の注射と同様、痛みや出血を伴うことがあります。
※不利益の詳細は同意説明の際に担当医師より丁寧に説明いたします
※副作用が起きましたら医師が適切に処置いたします
5.費用
本治療は保険適用外であるため、治療にかかる費用全額をご自分でご負担いただきます。治療を希望される部位の大きさや治療回数に応じて費用が異なります。治療費の目安は、2,131,272円(税込)~2,347,092円(税込)となります。
当科初診の際には原則として他の医療機関からの「当再生医療目的であることを明示した紹介状(診療情報提供書)」をご持参ください。紹介状をお手元にご用意の上、事前の予約(火曜、木曜[大山初診枠限定] 午前の初診枠)をお願いします(①紹介元医療機関からの予約(Web、FAX、電話)【詳細はこちら】、②患者さん自身での予約(Web、電話)【詳細はこちら】)。初回はその他の脱毛症の鑑別を行うと同時に、本治療法の簡単な概略を説明します。なお、次回から自費診療になります。また、お問い合わせの件数が多く、予約日が先になることをどうぞご了承ください。