高齢診療科概要・特色
神﨑 恒一
病気と上手に付き合うお手伝いを
高齢診療科は、齢を重ねることによって起きる様々な病気(高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、骨粗鬆症、心不全、認知症など)を総合的に診る診療科です。高齢者はこれらの病気を複数もっているのが特徴であり、病気の治癒を目指すというより、病気と上手に付き合いながら満足した日常生活を送っていただくことを目標としています。当科の入院症例の多くは救急外来を経由しています。患者さんはいろいろな疾患を合併していることが多いため(心不全を合併した肺炎、糖尿病・末梢動脈閉塞症のある脳梗塞患者、認知症のある誤嚥性肺炎など)、多疾患を平行して治療する必要があります。医療の専門化、技術の高度化が進む中で、当科は"病気"ではなく"病気をもつ高齢者"の診療に努めています。また、退院後の療養支援など生活に踏み込んだきめ細かい医療・ケアを提供するよう心掛けています。
当診療科の特色
入院病床25床を固有病床と有する高齢診療科は“高齢者の内科系疾患をあまねく診る”という基本姿勢で診療にあたっています。当科は救急外来を経由する緊急入院患者数が多いのが特徴です。また、いわゆる老年症候群(高齢者のQOL, ADLをそこなう症状)に対処するため、認知機能、日常生活動作、気分、意欲、嚥下機能、栄養状態、社会環境など、高齢者が日常生活を送る上で把握しておくべき様々な機能を評価し、看護、リハビリ、薬剤師など他の職種と協働して医療を提供する点で、一般内科と姿勢を異にします。
診療は、上記のように高齢者総合機能評価を取り入れて行っています。もの忘れ外来では認知機能はもとより、日常生活自立度、栄養状態、体力、バランスなど、日常生活に関連するさまざまな身体機能を評価します。そのための特殊な検査も実施しています。病気の治療だけでなく、生き生きとした生活が送れるように、患者さん本人の生活と家族の関わり方について指導しています。その他、介護保険申請のための主治医意見書作成や、デイケア、デイサービス導入のための情報提供なども行っています。
取り扱っている主な疾患
認知症、骨粗鬆症・転倒、高血圧症、高脂血症、摂食・嚥下障害、肺炎、心不全など高齢者に頻度の高い疾患(疾患を診ると言うより、疾患を抱える高齢者を診るのが基本姿勢です)
診療体制
外来は、月曜から土曜まで、初診担当医および再診担当医が外来棟4階で診療を行っております。金曜午前には上部消化管内視鏡検査を外来棟地下2階で当科医師が行っております。
病棟は緊急入院の患者さんが多く、老年病専門医を中心としたチーム医療を行っています。
先進的な医療への取組みに
ついて
- 総合機能評価(疾患評価、BADL、IADL、認知機能、うつ、意欲、社会的背景)を用いた認知症の診断と治療:重症度に応じた個別治療
- 非侵襲的動脈硬化検査:非侵襲的検査(脈波速度、頸動脈エコー等)を用いた動脈硬化性疾患の病状把握
- 大脳白質病変の評価と危険因子検索
- 光トポグラフィーを用いた大脳活動のリアルタイム評価
- 経頭蓋超音波ドプラによる脳血流検査
- サルコぺ二アならびにフレイルの定量的評価
- 栄養評価:身体計測法、栄養調査表による詳細評価と生活指導
- 臨床疫学研究:物忘れ罹患高齢者の栄養摂取調査、コモンディジーズ罹患高齢者の脆弱性調査
- 日本医療研究開発機構研究:高齢者の誤嚥性肺炎の予防・早期発見のための研究