循環器疾患に専門性と総合力で立ち向かいます
超高齢社会における当院の使命

超高齢社会の日本。循環器疾患を抱える患者さんは急速に増えています。
循環器治療は日進月歩で、先端治療が次々に生み出されています。
当院では、現代社会の医療ニーズをとらえ、各分野のスペシャリストを集結し、
最先端かつ最適な治療の提供にチームの力で挑みます。

循環器疾患に専門性と
総合力で立ち向かいます
超高齢社会における当院の使命

超高齢社会の日本。循環器疾患を抱える患者さんは急速に増えています。循環器治療は日進月歩で、先端治療が次々に生み出されています。
当院では、現代社会の医療ニーズをとらえ、各分野のスペシャリストを集結し、
最先端かつ最適な治療の提供にチームの力で挑みます。

専門性の高い治療の
提供を目指して

当院の循環器内科では、冠動脈疾患、弁膜症、心不全、不整脈、肺高血圧などの心臓疾患、末梢動脈性閉塞疾患、静脈血栓症などの血管病変の治療を多面的に行っています。また、緊急性の高い疾患に対し、最適な治療を提供できるよう努めています。
世界の循環器領域では、日進月歩の先端治療が生み出されています。当科でも、研究・開発に努めると共に、最良の治療を提供できるように日々研鑽に励んでいます。

循環器内科 診療科長/教授
副島京子

循環器内科では、通常診療以外にも
6つの専門外来を設けています

医療ニーズを捉えた
最先端の治療を
提供しています

教えて!杏林の循環器治療
【不整脈】

日本で今、急速に増えている病気の一つが「不整脈」です。当院では不整脈センターを設置し、不整脈をもつ患者さんに対して高度先端医療技術を駆使した治療を行っています。

不整脈ってどんな病気?
不整脈とは、心臓のリズムが乱れて脈の打ち方が異常になった状態のことです。不整脈のタイプは、脈が速くなる「頻脈」、脈が遅くなる「徐脈」、脈が飛ぶ「期外収縮」に大別されます。不整脈の症状は、全く症状を伴わないものから、動悸・めまい・失神などの症状をきたすものまで様々です。不整脈の中でも増加しているのが「心房細動」です。健康診断で発見された人は約100万人(2019年のデータ)。潜在患者や時々発作が起こる人を含めると大幅に上ると推測されている、とても身近な病気です。
不整脈の原因は?予防法はあるの?
原因は、「ストレス」、「睡眠不足や疲れ」、「ホルモンバランスや自律神経の乱れ」などのほか、「高血圧症や心臓病」、「肺や甲状腺の病気」などのこともあり、さまざまです。不整脈を予防するためには、規則正しい生活を送りましょう。「疲労やストレスを溜めない」、「バランスのよい食事をとる」、「睡眠を十分にとる」などの日常の健康管理が、不整脈の予防につながります。
どんな症状が出たら病院に行けばいいの?
見逃してはいけない不整脈の症状は、「突然の動悸で息苦しくなって冷や汗が出る」、「脈拍が減り強い息切れを感じる」、「脈拍が速くなり意識が遠のく」、「脈が飛んで胸に不快感がある」などです。また、健康診断で脈の乱れを指摘された方は相談してください。

自分の脈拍を調べてみましょう

  • 片側の手首を外側に回して少し手の平を返す。

  • 手首を少し上げて、しわを確認。

  • しわの位置に薬指の先がくるように、人差し指、中指、薬指の3本を当て、
    親指のつけ根の骨の内側で脈がよく触れるところを見つける。

  • 15秒ぐらい脈拍を触れて、間隔が規則的かどうか確かめる。

  • 不規則かなと思ったら、さらに1分から2分程度続ける。
    不規則な場合、心房細動かもしれません。その場合は医師に相談して、心電図検査を受けましょう。

公益社団法人日本脳卒中協会 日本不整脈心電学会
心房細動週間http://www.shinbousaidou-week.org/selfcheck.html より

もっと知りたい!
不整脈センターのこと

チーム医療で総合的な不整脈治療を提供

不整脈専門医9名、診療看護師(NP)、臨床工学技師ら専門家がチームを組み、不整脈の検査、診断、治療に取り組んでいます。

最新の3次元マッピングシステムを
取り入れた治療

細い管を血管に通し、心臓に挿入して行うカテーテルアブレーション治療が効果的な頻脈に対して、2015年アジアで初導入した
「MediGuide X線血管撮影装置」を使用し、患者さんの医療被ばくを最小限に抑える治療を行っています。
また、3種類の最新式3次元マッピングシステムを使い分けながら、難治性不整脈の解析、治療を行っています。

参考)カテーテルアブレーション件数: 381件(2022年度実績)

遠隔モニタリングで日常生活をサポート

ペースメーカーや除細動器(ICD)を体内に植え込んだ患者さんに対し、診療看護師(NP)が24時間患者さんの日常生活を見守ります。これまでに対応してきた患者さんは1,000人以上。不整脈や心臓の状態などを遠隔モニタリングし、日常生活のアドバイスを行うほか、緊急時に迅速に対応できる体制をとっています。このように、患者さんのアフターフォローにまで力を入れているのが、当院の不整脈治療の特徴です。

最新開発情報

腕時計型脈波計で得られる脈波データから、脈の乱れ、つまり心房細動を検出する研究を企業と協働で行っています。
心房細動は脳梗塞の原因になりますが、自分では症状に気づきにくい疾患です。腕時計機能も備えたこの装置を普段から身に着けることによって、常に脈のチェックができるだけでなく、自覚症状のない脈の異常を知ることができます。心房細動の早期発見・早期受診に結び付けられることを目指し、現在開発中です。

腕時計型脈波計:
脈拍の計測・脈の乱れの判定のほか、
歩数や消費カロリーなども記録ができる

世界規格になる
不整脈治療を提供したい

循環器内科・不整脈センター
 診療科長 教授 副島 京子

不整脈治療の先進国である米国での勤務経験をもとに、不整脈センターの開設に携わりました。「世界標準の不整脈治療を提供したい」という想いを胸に、高度先端医療技術を駆使しながら、チーム医療で不整脈治療に挑んでいます。

また、不整脈センターでは、先端治療や医療デバイスの開発にも積極的に取り組んでいます。これから先も、様々な企業や医療機関と協力し合いながら、患者さんのQOL向上に役立つ研究を続けていきたいと思います。

医療の発展への貢献

世界最小リードレスペースメーカーの開発
電気刺激を送り、心臓の筋肉(心筋)を拍動させることで、本来の心臓機能を維持させるペースメーカー。小型軽量化し、世界最小となるリードレス(細長い電極のリードが少ない)のペースメーカー(Micra®)が、当院を含む国際協同治験によって、開発されました。ペースメーカーを心臓内に留置させるという革新的プロダクトであり、国際共同治験での植込み経験を経て安全性と有効性が確認されています。
この新しいタイプのペースメーカーの開発により、患者さんは、リードの断線、静脈閉塞、胸部の皮下ポケットからの感染リスクなどから解放され、制限のない生活を送ることが可能になりました。
参考)ペースメーカー植込み件数: 新規89件、交換42件(2022年度実績)

Micra®(Medtronic社)

教えて!杏林の循環器治療
【カテーテル血管内治療】

近年、患者さんの身体に負担の少ない治療法の進歩はめざましく、カテーテルを用いた血管内治療もその一つです。血管内治療とは、カテーテルと呼ばれる細い管を血管に挿入して病変を治療する方法です。

冠動脈インターベンション件数(2019年実績)

428

虚血性心疾患での血管内治療

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は、命に関わるため、迅速かつ適切な治療が必要です。このような疾患に対し、循環器内科では低侵襲な冠動脈インターベンション(心臓カテーテル治療)での治療を実施しています。

末梢血管疾患での血管内治療

当院形成外科とともに重症下肢虚血の診療にも積極的に取り組んでいます。壊疽した足や血行再建に難渋するケースにも様々な手法を用いて救肢に全力を尽くします。

教えて!杏林の循環器治療
【大動脈弁狭窄症】

高齢化が進む近年、75歳以上の約8人に1人は大動脈弁狭窄症に罹患しているといわれています。当院では、心臓血管外科とも連携しながら、新たな治療法を積極的に取り入れ、患者様に最適な治療方法を選択しています。

大動脈弁狭窄症ってどんな病気?
大動脈弁が石灰化等によって開きにくくなることで、心臓のポンプ機能が落ち、易疲労感や労作時の息切れなどの症状が起こり、進行すると心不全に至ります。心不全に至ると寿命を縮めるリスクがあります。主な要因は、動脈硬化で、その他にリウマチ熱、先天性異常などがあります。
エドワーズライフサイエンス(株)提供

新たな治療法
TAVI:経カテーテル的大動脈弁留置術

これまでの大動脈弁狭窄症の治療では、人工心肺を用いて一時的に心停止させ大動脈弁を人工弁に置き換える「大動脈弁置換術」が行われてきました。当院では、新たな治療法として、2019年より、開胸および人工心肺を用いずにカテーテル操作のみで人工弁を大動脈弁位に留置する方法を取り入れています(TAVI:経カテーテル的大動脈弁留置術)。これは、低侵襲で体に優しい方法であり、高齢等による体力の低下や合併症のある患者さんにも貢献できる治療法です。

当院の大動脈弁狭窄症の施術(TAVI)を行うハイブリッド手術室には、同時に2方向の撮影が可能で高精度の心・血管撮影装置が設備されています。撮影時間の短縮、被ばく量の軽減、安全性の高い治療が可能です。

ハイブリッド手術室

教えて!杏林の循環器治療
【肺高血圧症】

当院の肺高血圧症の患者数及び治療実績の多さは国内でも有数です。慢性肺血栓塞栓性高血圧症※では、2009年からカテーテルによる血管形成術を日本の草分けの1つとして実施しており、今では年間120例以上の経皮的肺動脈形成術(BPA)を実施しています。当院の肺高血圧症治療は海外からも注目されており、アメリカメイヨークリニックで実技指導を行ったほか、ヨーロッパ各国から医師の視察受入れなども行っています。

※慢性血栓塞栓性肺高血圧症とは、血栓により肺動脈が閉塞または狭窄することで、肺高血圧症になる疾患。 厚生労働省の指定難病に指定されている。

慢性肺血栓塞栓性高血圧症の治療として行った経皮的肺動脈形成術(BPA)の年間症例数(2022年実績)79

肺高血圧症ってどんな病気?
心臓から肺に血液を送るための血管(肺動脈)の血圧が高くなり、心臓と肺の機能に障害をもたらす病気です。また心臓にも負担がかかるため、次第に心臓(右心室)の働きが悪くなり、右心不全を引き起こすこともあります。
肺高血圧症の症状は?
肺高血圧症では、息切れ、易疲れ、胸痛や動悸などの症状があらわれます。他にも失神発作や、声のかすれ、咳、血痰などが出ることもあります。また、右心室の拡張で働きが悪くなると、全身のうっ血が起こり、食欲不振、顔面や下肢のむくみ、右上腹部が痛む、などの症状があらわれます。

肺高血圧症の認定施設として先進的な治療を

循環器内科 学内講師 伊波 巧

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(肺高血圧症の一種)に対する日本のカテーテル治療(BPA:経皮的肺動脈形成術)は、世界から注目されています。当院はこの治療の実施施設として認定されている数少ない施設の1つで、私はBPA指導医※として、日々術者の育成と質の高い医療の提供に努めています。
近年、肺高血圧症治療の進歩はめざましく、患者さんの生存率は大きく改善していますが、まだ十分ではありません。早期診断と適切な治療のため、多摩地域の先生方々との連携を密にし、より患者さんの健康と生活の質の改善につながる診療・研究を目指していきます。

※BPA指導医は日本国内に4名(2021年現在)