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被災地でのリハビリ支援 (講演概要)

2013年5月18日開催:杏林大学公開講演会


杏林大学保健学部 准教授
河野 眞(専門:作業療法)




    ○講演概要

    東日本大震災から2年以上が経過し、被災地では復旧・復興が進みつつある反面、被災者の心や体は新たな課題にも直面しているようです。 報告者は作業療法士というリハビリ専門職としての知識や技術を活かしながら、仲間たちと共に発災以来被災地支援を行なってきました。

    リハビリというと身体的な対応が中心と思われるかもしれません。しかしこれまでの活動を通して、被災者への心理的支援やコミュニティの再建などにもリハビリの知見を活用できることが分かってきました。 一般に、大地震発生時には建物の倒壊などによって脊髄損傷や切断など新たな障害の発生する傾向が強いといわれています。東日本大震災は津波被害が中心でしたが、阪神淡路大震災では建物倒壊が多発したことから、わが国でも地震被害の種類によっては新規の障害者が同時多発する可能性はあると考えられます。そのようなとき、災害後の緊急支援の段階からリハビリ専門職の知識や技術が役に立つ可能性が高いといえます。

    また、阪神淡路大震災では仮設住宅での孤独死が課題とされました。特に50代60代の男性で、アルコールの影響が疑われる死因の孤独死が数多く発生しました。これは仮設住宅に暮らす人たちの生活習慣や心理的健康度にかかわることだと思われます。そのような場合も、生活習慣の改善や身体的・心理的健康度の維持はリハビリ専門職の職能の一つですので、復旧・復興段階でのリハビリ専門職の活用が被災者の生活の質の向上に資するところは大きいでしょう。

    最後に、東日本大震災では被災3県の住民全体の死亡率が1.03%であったのに対し、障害者の死亡率は2.06%と2倍に達しました。これは、障害者にとっての情報バリアや移動バリアが地域に存在し、それによって避難が遅れ犠牲が増えたと推測されます。防災・減災の観点から地域のさまざまなバリアを検証し、その対策を防災計画に織り込んでいくことが今後は不可欠です。もちろん、リハビリ専門職はその職能からさまざまなタイプの障害特性について熟知しています。障害者に優しい地域防災計画を立てる際にその知見を活用することができます。

    以上のように、災害にかかわるあらゆる段階でリハビリ専門職は貢献できる可能性があります。しかし、東日本大震災を含め、現状ではあまり活用されていません。今後は災害対応へのリハビリ専門職の活用を広く訴えたいと考えています。



    2013年5月18日 杏林大学公開講演会
    『被災地でのリハビリ支援』 保健学部作業療法学科准教授 河野眞


    杏林大学 広報・企画調査室




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