診療体制

多摩地区の拠点病院として産婦人科の4大領域である、周産期医療、婦人科腫瘍、生殖医療、女性医学のすべてにおいて高度な医療提供体制を備えています。また、内視鏡技術認定医も在籍しています。各部門の先生方から教えてもらいましょう。

周産期 松島実穂

杏林大学医学部付属病院は、総合周産期母子医療センター(スーパー総合周産期センター/図①)として多摩地区の周産期医療を支える重要な施設です。総分娩数は年間800件ほどで、帝王切開率は約40%です。正常妊娠・正常分娩はもちろんのこと、様々な疾患を有する母体と胎児の管理を行っており、多くの症例を経験できます。またスーパー母体救命指定施設でもあり、救命救急科・麻酔科・放射線科・小児科とも密接に連携し、重体の母体救命にも積極的に取り組んでいます。

病棟はチーム診療で、当直も2人での当直体制ですので、若い先生方がたった一人で診療にあたることはありません。自信を持って妊婦さんの治療方針を立て、お産を扱えるようになるまで必ず指導医がつきますので、安心して研修できます。
そのほかにも、産科ガイドラインの読み合わせ会や、週1回の症例検討会では担当した患者さんについての発表とディスカッション、分娩や胎児超音波検査、縫合などのシミュレーション研修も定期的に開催し、みなさんが勉強できる環境は十分に整っています。超音波遺伝外来では、疾患が疑われる胎児の専門的な精査を行っておりますが、指導医による丁寧な指導のもと若い先生も超音波検査にあたっています。また、地域の産科医療の利便性の向上を目指し、2007年よりセミオープンシステム(図②)を導入し、現時点で近隣病院34施設との連携を行っています。さらに近年より計画無痛分娩を導入しています。

このように、当科の産科部門は診療と共に教育にも大変力を入れています。明るく親しみやすい雰囲気の中で、必要な知識と技術を身につけることができます。興味がある方は是非見学にいらしてください。

婦人科腫瘍 松本浩範

婦人科では年間約600件の手術を行っております。良性疾患から悪性疾患まで婦人科疾患全般を網羅しています。悪性疾患(浸潤癌)は年間約100件の手術件数があり、婦人科腫瘍専門医も5名在籍し十分な教育環境が整っています。また腹腔鏡下の婦人科悪性腫瘍手術も行っており、開腹手術から腹腔鏡下手術まで十分に学べる環境にあります。良性疾患についても開腹手術から腹腔鏡下手術まで豊富な症例があり、入局1年目から執刀出来る環境にあります。一方で産婦人科専門医取得後のサブスペシャリティである婦人科腫瘍専門医や細胞診専門医を育成するための教育も充実しており、将来的に多くの施設で活躍できる人材を育成する環境にあります。

婦人科腫瘍を極めるための教育および環境が十二分に整っており、婦人科腫瘍学を志したい君たちを待っています。ぜひ私達とともに婦人科腫瘍の将来を担う一人として切磋琢磨していきましょう。皆さんの入局を心よりお待ちしています。

内視鏡 澁谷裕美

当科では良性腫瘍(主に卵巣嚢腫、子宮筋腫)や異所性妊娠、不妊症に対する腹腔鏡下手術や子宮鏡下手術と、悪性疾患(主に子宮体癌)に対する腹腔鏡下根治術(リンパ節郭清)を行っています。日本産科婦人科内視鏡学会で認定される腹腔鏡下手術認定施設であり、技術認定医も2名在籍しています。悪性疾患を腹腔鏡下で行うには日本婦人科腫瘍学会の腫瘍専門医がいることも必須条件で、当科では内視鏡技術認定医と腫瘍専門医を同時に取得した医師を中心に悪性疾患の腹腔鏡下手術を行っています。入局4年目に産婦人科専門医を取得した後、腹腔鏡下手術をsubspecialityに選択した場合は100例の腹腔鏡下手術を執刀し、日本産科婦人科内視鏡技術認定医の取得を目指します。

生殖内分泌 石川美佳

皆様は不妊治療にどのような印象をもっているでしょうか。専門的な知識が多く難しそう、治療のゴールが見えない、値段が高い…などなど。不妊治療は2022年度より保険適応となり、より患者さんにとって身近なものになりました。

当院の生殖内分泌(不妊治療)はタイミング治療、人工授精、体外受精と一連の治療を行っています。当医局の日常診療は産科と婦人科に分かれているので、不妊治療チームはどちらかに所属しながら、不妊治療に携わる形になります。外来は週に2回、人工授精や体外受精における採卵・胚移植は患者様の状態に応じて平日は毎日対応しています。それぞれに所属しながらの不妊治療は忙しい時もありますが、産科・婦人科の垣根を越えて女性のライフスタイルに寄り添った仕事をすることができるため、とてもやりがいを感じます。産婦人科専門的取得前であっても興味があれば積極的に診療に参加してもらっています。

また、大学病院なので合併症を持った患者さんも多いです。当科で行っている病気を持つ女性の妊娠前相談ができる『プレコンセプションケア外来』とも連携しながら診療を行っています。不妊治療は妊娠することが目的ですが、そこに至るまで、至ってからの経過も携わっていけるのは当院で不妊治療を勉強するメリットだと思います。

女性医学 小林千絵

産婦人科のサブスペシャルティは大きく分けて周産期医学、婦人科腫瘍学、生殖内分泌学、そして女性医学があります。女性医学とは『産婦人科の専門領域のひとつで、QOLの維持・向上のために、女性に特有な心身にまつわる疾患を主として予防医学の観点から取り扱うことを目的とする』と定義されています。日本の平均寿命は世界でもトップクラスなのは知っていると思いますが、この少子高齢化社会で必要なのは平均寿命を延ばす事よりも健康寿命を延ばす事です。この健康寿命に対するアドバイザー的な存在が女性ヘルスケア専門医となります。杏林大学産科婦人科における女性医学の専門外来は主に『すこやか外来』と『プレコンセプションケア外来』ですが、産科・婦人科の一般外来でもその知識は必要とされます。産婦人科医になり外勤で外来をするようになると更に実感すると思います。

月経困難症で学校も休みがちな悩める中学生、更年期障害で仕事も行けず家族にあたってしまう女性、頻尿で夜中起きてしまい熟睡が得られない高齢女性にどのような治療法を提案しますか?挙児希望があるけれど重度の病気を持っている人にどのようなアドバイスをしますか?簡単なようで結構難しいです。皆さんもぜひ一緒に勉強してみませんか?結構自分の健康意識にも繋がるので意外に興味持てると思います。敷居は高くないです、お待ちしています。