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トロントより その2

2011年7月11日 12:08

 

こんばんは。北島です。

昨日からカナダのトロントに居ります。

 

 今日は、午後からInternational Health Economics Association(iHEA)の学術大会のプレ会議に参加しました。会議のタイトルはEconomic Evaluation Methods for upstream population health interventionsでした。

 

 人々の健康に影響を与える要因には、保健医療サービスだけではなく、衣食住、教育、収入、労働環境、社会保障など、様々なものがあります。タイトルに出てくる”upstream population health intervention”とは、そのような要因を通して人々の健康水準を良くしていくことを目的とした活動や事業のことを意味しています。upstreamとは川上ということです。それに対して、病気にかかりにくくする目的で、個々人の食事や運動習慣の改善、禁煙を促すといったことを川下(downstream)の保健活動と呼んでいます。

 

 どのレベルの活動であれ、国や自治体の限られた財源をもとに行われている場合、経済的評価を行い、支出に見合うだけの効果を得ているのかをチェックすることは大切なことです。「川下」の保健活動については、費用効果分析などの経済的評価の方法論が確立されてきていますが、「川上」の活動の経済的評価については不十分な状況です。

 

 そのため、このプレ会議では、これまでのこの分野に関する研究成果を確認し、今後の課題を整理することを目的として開催されました。7人の講演者がそれぞれの研究や活動の報告について話をし、全体での討議が行われました。色々な話がありましたが、総括すると、教育、住宅、社会保障など、必ずしも健康水準を上げることが目的ではない部門における事業が、人々の健康水準にどの程度影響しているのか、またその費用はどのくらいなのかということを明らかにすることが不可欠であること、そして、対象集団全体の健康水準を上げることと、対象集団内ので健康に関する公平性との間の折り合いをどするのか、ということについて研究を進めていく必要があるということだったかと思います。

 

 会議で紹介された事例の一つに、失業者への生活費保障プログラムというものがありました。1970年代にカナダのDauphinというところで5年間実施されたものです。このプログラムが導入後、他の地域と比べてDauphinの高校中退者の復学割合が上昇し、事故と精神疾患による受診率の低下していましたが、プログラム終了後は、差が無くなりました。目的も規模も違いますが、日本の「子ども手当」や「高校の授業料の無料化」は、子ども達の健康に影響したのでしょうか?

 

夕方に学術大会の開会式がありました。写真はその時の様子です。

 

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