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シンガポール観光実習 (平成14年)

鳥尾 克二(外国語学部Eコース客員教授)

8月31日から9月7日まで7泊8日の第2回シンガポール観光実習を実施しました。この実習はEコースのサービス産業論Ⅰ、Ⅱを履修する学生が、さらに観光の実体験を通してツーリズム産業を掘り下げて学習するため用意されたプログラムです。
プログラムは科目名インターンシップⅡ、履修形態は実習旅行として設計されています。インターンシップは学生の模擬的就業体験による実社会の経験的学習と進路選択の判断支援の側面がありますが、このプログラム実施に際しては次の諸点に留意して設計がなされています。

(1)観光や旅行の産業的学習のため、その前提となる旅行そのものの実体験の場を用意すること、
(2)あわせて旅程消化のプロセスを通して観光や旅行産業の事業や業務内容が実践的に学習できること、
(3)そのため、旅行を構成する各種の事業サービスを現場研修し得る内容を備えていること等です。

旅行は移動と滞在で構成される一回限りの無形サービス商品であり、日常生活では得られない未経験かつ新鮮な世界体験の場であり、その体験を可能とする特別な時空価値です。

この場や時間の価値消費は見知らぬ異郷でなされる時、その体験の記憶は鮮烈であり、人生をより豊かにするきっかけと知識を与えてくれる契機でもあります。その意味で、次代を担う若者の柔軟な心に本格的な観光体験と産業の価値認識の場を設営することは大変意義あることと思われます。滞在の場は検討の結果、安全性、観光産業の集積、研修手配の効率、複合異文化の学習効果期待が高いシンガポールが昨年に引き続き選択されました。

ツーリズムはモノとしての財を生産しません。形のないサービスを生産します。ツーリズムサービスの実態は事業を形成する機能サービスと人的サービス、特に接客サービスに立脚しており、この観点から、産業の中核を占める輸送・宿泊・旅行・供食各事業はホスピタリテイー産業とも呼称されます。

ホスピタリテイーサービスの産業的重要性は近年とみに認識されてきていますが、人的サービスの生産と消費は同時かつ特定現場であり、その本質理解には実体験がもっとも有効です。

このプログラムの設計思想はこの点にあります。顧客の体験満足は事業機能サービスと接客サービスが高い次元で組み合わされる特定の場所と時間で生産されます。

この種の満足への需要が巨大な経済価値を生み出す源泉であり、その生産がツーリズム産業の事業目標です。このプログラムにはこの種の満足の生産にたずさわる事業現場の仕組みの見学が組み込まれました。

パンパシフィックホテルの見学研修では通常のホテル見学では体験し得ない予約・営業オフィスや厨房への訪問や、総支配人の特別講話が用意されました。

Singapore Hotel And Tourism Education Center(SHATEC)ではSHATEC側の学生が実習参加学生のために特別メニューを企画・調理しかつ自らの実習としてサービスする昼食を通して国籍と言葉を越えたホスピタィテイーの交流体験がありました。

現地旅行手配を担当しこの実習を楽屋で支えたランドオペレーターのJALPAK International Asia(JPI)では、オフィス見学や社長の特別講話が用意されました。

ツーリズム産業が特に必要とする人間の能力と資質の実例や経営者による業務の実態講話は学生達に対し強いインパクトを与えました。またSHATECでは明確な目的意識をもって学ぶ同世代の学生達との比較を通して参加学生に対し、産業への学習意欲の喚起と確認の機会が体験されることとなりました。

飛行機やホテルやレストラン、旅行会社のガイドサービスなどは利用者に対し必ず人的サービスを通して提供されています。したがって彼らのサービスの質が事業商品の質に多大な影響を与えることとなります。

人的サービスの核心は人間の機能の能力と資質であり発揮されるホスピタリテイーの質です。このプログラム全体を通して参加学生が体験したホスピタリテイーの質と種類は産業の理解強化と目的意識の醸成に大きな動機と成果を与えたと思います。

実習期間中、学生達は多いに学び満足の生産現場とそのメカニズムを体験し、よく食べ、かつエンジョイしました。学生達は生産されるサービスの価値と消費者が受け取る満足価値のバランスで成り立つ見えざる商品価値の生産と消費の現場に立ち会うことを通して、それぞれの立場でツーリズム産業を理解・認識したと思います。

実習の仕上げとして乗船した豪華客船Super Star Virgoの航海中、それまでの実習を通して成長し、上手にクルーズ文化を楽しむ学生達の姿をみて私もすっかり嬉しくなりました。学生諸君が今回の実習を活かし、顧客の満足を自らの満足とするホスピタリテイ産業、その代表であるツーリズム産業の学習と認識を深めてこの体験をこれからの進路設計や人生設計に役立ててくれることを願っています。

齋藤 篤史(外国語学部日本語学科5セメスター)

観光とは、自分なりの目的をもって、その目的を体験することがその人にとっての価値であると思う。私は、シンガポールという触れたことのない国、文化の中で、今まで経験したことがない経験をしたいため、今回の研修に参加した。

加えて、参加した39人の学生の団長として参加できるということは、より多くの事を経験できると思った。そして、体験することのすべてを目一杯楽しんで体験していこうと思った。

研修では、非常に貴重な経験ができた。始めに2日目にホテルインスペクションで私達が宿泊していたパンパシフィック内を、従業員の方々が案内してくれた。

そこではホテルで重要な収入源になるであろうバンケットの仕組みや状況、厨房での仕事、事務所での仕事の内容、フロントとのつながり、その他洗濯場や飾りの花を作っている場所など、事細かに説明していただいた。こういう内部などは普段見ることができない場所である。この内部の方々の仕事、一人一人の仕事がすべて重要で、こういう各場所での仕事がきちんと行われているからホテルは成り立つのであろう。漠然と、まあそうだろうなあ、と思ってはいたが、実際に自分の目で見るとその考えが強くなった。
パンパシフィックの総支配人の上谷さんがおっしゃっていた、「I`m Pan Pacific」一人一人がこのホテルの代表なんだ、そこには上も下もない、という言葉は、このホテル内部を見学できたことによって、とても理解が深まった。この一週間の間に、他にも多くのホテルを見学することができた。

私は普段ゼミで観光について学んでいるが、宿泊施設というのは、観光と切っても切れないものであるので、どこのホテルも興味深く見学できた。パンパシフィックで色々なことを学んだので、各ホテルでも様々な点に注意して見学した。どこのホテルも高級な立派なホテルなので、宿泊部屋、リラックスルーム、プール、レストラン、その他各施設隅々まで目が行き届いていて、こだわりがあり、宿泊者に快適に過ごしてもらえるような工夫がなされていた。私が特に気に入ったホテルはSHANGRI−LAである。

見学したたくさんのホテルの中でもこのホテルは、宿泊部屋はなにか斬新的なデザインというか、ありきたりな部屋のデザインと違い、モダンな感じで見ているだけで楽しませてくれた。しかし緑なども多く落ち着けるし、プールなども見えるし、一度このホテルにも宿泊してみたいと思った。

ホテル以外にも、企業に研修に行った。3日目のDFS視察とJPI ASIA訪問だ。これもパンパシフィック同様普段覗けない内部を見学できたことが非常に大きな経験となった。

DFSでは、単純な質問から様々な質問まで、丁寧にわかりやすく説明していただいてよく理解できた。海外旅行をすると必ず免税店に誰もが立ち寄る。その免税の仕組みから理解することができてよかった。そしてJPI ASIAの方は、私は観光業に興味があるので、本物の旅行会社を自分の目で見学できたことは非常にいい経験になった。

仕事の内容を教えていただいたり、私達の研修を作成してくれた方などにも会えて、旅行という商品が作られて売られるまでの流れが、少しではあるが理解できた。またそれは一人ではなく、企画する人がいて、実際に作成する人がいて、ランドオペレーターがいて、などたくさんの人の仕事があって一つの旅行という商品になるのだと思った。

他にSHATECへ行った。ここでは私達と同年代の人達がホテル業やサービス、tourismなどを学んでいた。どの生徒も真剣な眼差しで取り組んでいる姿は、同年代の私にはとても刺激になった。昼食を生徒達が作ってくれた料理を食べ、生徒達のサービスを受けたが、本当のレストランにいるような感じで立派だった。実際に見学で訪れたホテルにもSHATECの卒業生がいて、この学校の素晴らしさを感じた。

4日目にはJPI ASIAの社長の辻さんと、パンパシフィックの総支配人である上谷さんにレクチャーを受けた。企業のトップの方に話を聞く機会はなかなか無いことなので、これも大変いい経験になった。

社長である辻さんから直に、企業理念を聞いたり、企業訪問したときに加えて様々な話を伺った。やはりトップの方の話は説得力がある。上谷さんからも、ホテル事情や、上谷さん自身の考え、理念を伺ったが、こちらも説得力があった。先にも述べたが「I`m Pan Pacific」一人一人が会社の代表であり、上も下もない、といった考えに深い共感を覚えた。この考えだと従業員一人一人のモチベーションも高くなるだろうし、そのような理念が根底に基づいているから、パンパシフィックのような素晴らしいホテルでありえるのだろうと思う。実際私もそのような考えを持っている上司が理想である。

そして5日目にはシンガポール在住の方のお宅へ班ごとで訪問した。海外を訪れたとき、一番その国の生活や文化が学べるのは、実際にその国の家庭を覗いてみることだと思う。私達の班が訪れたのは、日本人の女性の家庭だった。

その人はシンガポール人と結婚して観光の仕事をしながら暮らしているのだという。ここでは、飾らない普段の生活の話を聞いたり、部屋の中を見学させてもっらたり、他に家の中だけでなく、バスなど乗り物の話や行く先々で目に付く物事など色々なことを説明していただいた。

シンガポールとはどんな国なのか、この訪問で少し理解ができてきたのではないかと思う。

研修だけでなく、色々な観光や遊びなどでもいい経験ができた。今回の研修のパンフレットの表紙になっているブキティマ自然保護区に実際山登りしてシンガポールの自然を満喫したり、散歩して有名なマーライオンを見られたことも良い経験だ。

これらはシンガポールでしか経験できない時空価値があり、シンガポールなど日常とは違う場所でできる経験を大事にしていきたい。マレーシアでは、見学時間こそ長くはなかったが、事前にゼミでマレーシアのことを調べていたので、その知識を踏まえつつ、楽しみながら見学した。

また私は食文化に触れることを楽しみにしていた。シンガポールでは中華料理が多く、海鮮、飲茶、広東など、様々なバリエーションを楽しめた。私個人的にはインドネシア料理が気に入った。以前ブラジルへ行ったとき食べた料理が、がさつな感じで、美しい、というわけではないのだが、とてもおいしく好きだった。インドネシア料理はどこかブラジル料理に似ているところがあった。

一番思い出に残っているのは初日のホーカーセンターでの食事。この時はメニューが決まっていないため、自ら探し歩き、興味を持ったものを食べた。これが非常に楽しい。米の上に3種類ほどのおかずを乗せたものだった。タイで食べたような食事だった。現地の人達がたくさんいる屋台街で、雑な感じなのだが、何かパワーみたいなものを感じた。

そして忘れられないのがスーパースターヴァーゴでのクルージングだ。あんな大きな船に乗るのは初めてだったし、船で宿泊するのも初めてだった。ここには飽きずに過ごすことができる様々なエンターテイメントがあり、非常に楽しかった。

船はいってしまえば移動手段の一つにすぎないのだが、様々な工夫でたとえ移動手段の乗り物であっても立派に観光資源になるのだなあと思った。どんな場所でも、工夫をこらし、元の資源を生かしていけば観光資源になりうるのだなと、インバウンドツーリズムの基本みたいなものを垣間見た気がした。

今回、団長という大きな役割を任せていただき、非常に良い経験になった。研修中自分の力の小ささから不甲斐なさを感じたが、先生方や在津さんからのアドバイス、仲間達の支えや協力のおかげでなんとか乗り越えられたことは大きな自信となった。

すべて自分だけでかかえず、分担してやっていくということや、そのために必要となってくる報告・連絡・相談といったような、基本的なことの重要性を、体験をもって認識する事ができた。副団長の上村さんをはじめとした岩崎ゼミ・鳥尾ゼミのみんなの存在は本当に大きかった。一番大事なことはこの後の生活にどれだけこの経験を生かしていくかなので、今回の研修で得た経験と自信を大きな糧として頑張っていこうと思う。

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