2008年 | 杏林大学外国語学部(中国語専攻)卒業 |
2010年 | 杏林大学国際協力研究科博士前期課程国際文化交流専攻修了 |
2010年 | 日本中国文化交流協会に勤務、事務局長補佐、事務局次長 |
2017年 | 杏林大学外国語学部専任講師(現在) |
大学院で日中通訳・翻訳の技術を習得しながら、異文化間における翻訳の難しさ、可能性について考えてきました。その後、日中文化交流の現場で通訳に従事してきた実践経験を、より研究に反映させていきたいと考えています。
言語の翻訳は必ずといっていいほど文化の壁に直面します。その差異を如何にして処理するか、この問題は必ずしも絶対的な答えは存在しません。口頭での通訳の場合、訳語の処理は両者の立場や翻訳の目的といった環境によっても左右されるものであり、常に状況、空気、その場にいる人の経歴といった数ある条件を的確に判断し、その場に最も相応しい訳出を生み出すことが出来なければ、双方のコミュニケーションに齟齬を生む可能性が生じます。誤解を避けるためにも、双方のあらゆる事情に精通し、人の背景にある文化をより深く知ろうとする努力をすることが求められますが、それを通じて中国のみならず、日本の文化を深く理解するきっかけを得られるということに、通訳・翻訳の大きな魅力を感じています。
通訳・翻訳は実践ありきの分野だと思っています。日中交流の現場で、当事者を目の前にして学んだ技術を提供する、その喜びは何物にも代えがたいものです。現場で通訳をする場面では、時に走って逃げ出したくなるような恐怖に襲われることもあるかもしれませんが、常に知らない世界、新しい知識に立ち向かう日々は、スリリングで生きている実感を覚えられます。なによりも、そうした経験を通じて成長する自分自身を常に感じていられる分野は、他にはあまりないのではないでしょうか。さらに実践と経験を問題点へと転化し、さらに理論へと結びつけ深めていくことが、通訳・翻訳を学問として学ぶ醍醐味でしょう。
私自身、杏林大学で中国語をゼロから学びました。経験豊かな、様々な専門の先生から指導を受け、言葉だけではなく幅広く“中国”や“中国語”に触れることができました。通訳・翻訳を学んだ大学院では、甘えの許されない厳しい環境で、切磋琢磨できる学友と出会い、日々、学業とトレーニングに励んできました。卒業後は日中文化交流の業務に従事し、文学、映画、美術、演劇、音楽、医療など様々な分野の通訳を務める機会に恵まれましたが、その基礎はすべて杏林大学で育んだものです。夢がある人、将来がまだ見えない人、研究に勤しみたい人、すべての人が熱意をもって一生懸命努力できるような学ぶ環境が整っています。4年間を通じて魅力的な大人になった学生諸君が、世界で活躍する姿を期待しています。