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教授
稲垣 大輔
(INAGAKI, Daisuke)

経歴
1985年 筑波大学第一学群人文学類卒業
1991年 同大学院博士課程文芸言語研究科言語学専攻単位取得退学
1991-1996年 杏林大学社会科学部専任講師
1996-2004年 杏林大学社会科学部助教授
1999-2000年 米国マサチューセッツ工科大学(MIT)言語哲学科客員研究員
2004-2005年 杏林大学外国語学部助教授
2005年-現在 杏林大学外国語学部教授

先生の専門は何ですか?

専門分野は、英語学、言語学です。言語学の中でも、特に生成文法と呼ばれる言語を科学的に探究する理論言語学が専門です。

鳥は空を飛ぶように遺伝的に仕組まれているように、私たち人間はことばを話すように仕組まれて生まれてきます。人間の認知機構の中で言語を話し理解することを司っている仕組を普遍文法(Universal Grammar)と呼びますが、どの言語にも共通する普遍的特性にはどのようなものがあるのかを解明することが研究テーマです。特に自分の母語である日本語と、英語をはじめとする他の言語との比較統語論を通して、普遍的な特性を見つけることに研究の主眼を置いています。

なぜ、その専門に興味を持ったのですか?

大学時代の恩師、故安井稔先生、中右実先生、故原口庄輔先生をはじめ、当時、日本人として言語研究の第一線で活躍されていた先生方に言語研究のおもしろさを教えていただきました。大学院に進学し、同じ志をもった先輩・同級生・後輩たちと、夜を徹して自分の研究や最新の研究書・研究論文について議論した日々が今の自分の礎を築いてくれたと思っています。

杏林大学に入職後、1999年にMITに留学し、生成文法研究の創始者であるNoam Chomskyの講義に出る機会を持てたことが、さらに専門分野である普遍文法研究への興味を掻き立ててくれました。

先生の専門分野の「こんなところが面白い」を教えてください。

皆さんは外国語を学習する苦労をご存知でしょう。何度読んでも、何度聞いても忘れてしまいます。英語をはじめ母語ではない外国語の複雑な文法を覚える苦労も経験されていると思います。でも私たち人間は母語(第一言語)を苦労して覚えたでしょうか?ことばが話せるようになる小学校入学以前に、苦労して単語や文法を覚えたでしょうか?誰もが意識的な学習をせずにことばを話すことができるようになります。聴覚障害があっても環境さえあれば手話という自然言語でコミュニケーションをとることができるようになります。では、なぜ、どうやって私たち人間はことばを話し理解できるようになるのでしょうか?それを可能にしている仕組とはどのようなものなのでしょうか?

この地球ではヒトと呼ばれる生物学的種が、7,000種類を超える言語でコミュニケーションをとっています。世界の言語はこのように多種多様ですが、もし全ての言語に共通する、私たちヒトがことばでコミュニケーションをとることを可能足らしめている特徴が存在するならば、その多種多様な言語の中からどの一つの言語をとっても、その中には普遍的特徴が潜んでいるはずです。ではその普遍的特徴とはどのようなものなのでしょうか?

言語こそが他の生物から私たち人間を区別する生物学的特徴です。そんな私たち人間を人間足らしめている言語というものについて深く学びたいと思いませんか?

大学で専門的に学ぶことでどんな未来が?

残念ながら、専門分野で学んだ「知識」が将来、未来の皆さんの職業で直接活かされることはあまり多くないと思います。なぜなら知識は古くなるからです。新しいことが発見・発明され、それまで正しいと考えられていたことが実は正しくなかったと、知識は更新される運命にあるからです。

皆さんが大学で「専門的に学ぶ」ということは、ある問題について、今まで他の人がどのようなことを言っているかを知り、そこに間違いはないか、新しい事実が隠されているのではないか、そして新しい説を裏付ける証拠はないかと自ら問うことです。こうした知の営みによって鍛えられた知力、具体的には問題発見力、客観的分析力、問題解決力、説得的表現力などが、将来皆さんがどんな職業に就いても活かされると信じています。

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