公開講演会・公開講座
講演概要:IFRSとは何か 会計基準の国際的調和・統一を考える
2013年11月2日開催:杏林大学公開講演会
杏林大学総合政策学部 教授
内藤 高雄(国際会計学)
○講演概要
IFRSとは、国際会計基準審議会(IASB)によって設定される、国際的に統一された会計基準とされています。もともと各国がその国固有の法的、経済的、社会的状況に立脚した制度を形成していた会計基準を国際的に統一することは、非常に困難であるとされてきました。
ところが今世紀に入り、情勢が大きく変わってきました。広範な国際的資本市場が発達している現代社会では、会計基準の国際的調和化・統一化がマーケットの要請となってきたからです。
2005年よりEU諸国は、上場会社の連結財務諸表に対して、このIFRSを強制適用しました。これは米国に先駆けてEU諸国がIFRSを積極的に導入することで、IFRSの中にEUの主張を盛り込もうとしたためです。また後進国の中には、IFRSをそのまま自国基準として採用しようとする動きが拡大していきました。
このような情勢の中で、先進諸国の中でIFRSを採用していない国であった米国およびわが国も、ついにIFRSの強制適用に舵を切ったように思われました。すなわち米国2011年に、日本は2012年に、それぞれ3年後にIFRSの強制適用を実施することを判断すると発表したのであり、メディアも産業界もIFRSの強制適用を前提に盛り上がりを見せることになりました。
しかしながらこの動きは2011年に再転換することになります。米国およびわが国は相次いでIFRSの強制適用の延期を発表しました。そこには会計という問題にとどまらず、“オールド・ヨーロッパVSアメリカ・ブロック圏”といった国際政治の問題が大きく作用しています。また2005年から強制適用したはずのEU諸国も、個別財務諸表や非上場会社の財務諸表へのIFRSの適用については、IASBのお膝元の英国以外の国は後ろ向きであり、あくまでもアリバイ的なIFRSの適用にすぎないのが実態でした。
はたしてわが国が採るべき会計政策をどう考えるべきでしょうか。「IFRSを適用しないと、日本は取り残されてしまう」という認識は完全に誤っています。連結財務諸表と個別財務諸表を分離し、連結についてのみIFRSを適用する、あるいは海外での資金調達の必要から、IFRSの適用を不可避と考える企業のみが任意に連結財務諸表についてIFRSを適用することが望ましいと考えております。
2013年11月2日 杏林大学公開講演会
『IFRSとは何か 会計基準の国際的調和・統一を考える』
杏林大学 広報・企画調査室