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聴こえのしくみと耳の病気 (講演概要)

2013年6月22日開催:杏林大学公開講演会


杏林大学医学部 講師
増田 正次(専門:耳科学)




    ○講演概要

    1. 耳のつくり
    ●音が伝わる経路はおおまかに言うなら「鼓膜→耳小骨→内耳→神経→脳」である。「音を聞く、音が聴こえる」というと 耳にばかり注目が集まるが、最終的には脳が音を音として認識しているということも重要である。
    ●耳小骨は人体で最小の骨であり、米1粒〜2粒ほどの大きさである。
    ●耳の奥には、耳とは関係なさそうな顔を動かす神経、味を感じる神経も通っている。
    ●内耳は人体で最も硬い骨で被われ、保護されている頑丈な水槽である。その中は液体で満たされている。
    ●この中に聞こえ、バランスを感知する感覚細胞が住んでいる。感覚細胞は水槽の中に暮らす魚のようなものである。
    ●聞こえの細胞が住んでいる場所は、蝸牛と言われる部分である。この中の螺旋状の膜の上に聞こえを感知する細胞が整然と並んでいる。
    ●いかに整然とならんでいるか、感覚細胞が緑色に光る特殊なネズミを使って示した。このネズミでは感覚の敏感そうな所、例えば唇、ひげの付け根、指先が光って見える。このネズミの内耳を見ると、聞こえ、バランスの細胞が整然と並んでいるのが分かる。この様子は、人間の感覚細胞と同じである。
    ●さらに、これら感覚細胞には毛のようなものが生えているように見える。それゆえ、聞こえ、バランスの感覚細胞は有毛細胞と呼ばれている。
    ●有毛細胞はただ突っ立っているだけではない。音に反応して伸縮運動をするものもいることを動画で示した。このような特殊な動きをすることで音を効率よく伝えたり、余計な音を抑制している。
    ●有毛細胞は非常に繊細で一度障害され、消失すると再生しない。
    ●聞こえの細胞もバランスの細胞も同じ内耳に存在し、この内耳の中はひとつの水槽のようなところである。そして、聞こえ、バランスの感覚細胞はその中で一緒に暮らす魚のようなものだから、ひとたび水槽の環境が悪くなると両感覚細胞ともいっぺんに調子が悪くなる。こんな仕組みがあるから、難聴•耳鳴•めまいが同時に起きる病気が存在するのである。

    2. 耳鳴とは?耳鳴の対処法は?
    ●耳鳴発症の原因の一つに有毛細胞の消失があるが、「耳鳴」の実体は「脳の細胞の異常な活動」と考えると良い。
    ●心、つまりは脳が陰気であったり、ストレスがかかっていると異常な脳の活動つまり耳鳴は大きくなる。脳が陽気ならば耳鳴も小さくなる。
    ●耳鳴を和らげるコツは、「脳を悲しませない、苦しませない、心を健やかに保つこと」である。
    ●耳鳴の治療目標を「サッパリ、スッキリ、すぐに耳鳴を消し去る」に設定してはいけない。「徐々に、脳の細胞を慰めてあげる。」「徐々に、耳鳴を小さくしていく。」ということを目標にする。
    ●「沈黙を避ける」「孤独を避ける」というのが耳鳴を軽減させる方法の一つである。この点で、補聴器の使用も有効なことがある。補聴器により、脳に音を入れてあげ沈黙を避け、コミニュケーションをとり易くし孤独を避けることが可能である。
    ●ただし、補聴器の調整は耳鼻科を受診し、補聴器専門医のアドバイスを受けながら、患者さん自らも補聴器を使いこなそうと努力をしていく必要がある。

    3. めまいとは? その対処法は?
    ●ヒトは主に視覚、内耳、筋•関節の情報を脳が取りまとめることによってバランスを保っている。これらの関係が崩れるとめまいが生じる。
    ●耳鼻科医は耳の病気で生じるめまいのサインを読み取るのが得意である。患者さんの目の動き(眼振)を見て、めまいのサインを読み取る。
    ●耳の病気から生じる眼振がどのようなものか動画で示した。
    ●「めまい」と一言で言っても、その原因は非常に多岐にわたる。脳、心臓、血管、精神の異常でもめまいは生じる。
    ●「めまい」が生じてしまったときの安全策としては、まず命の保証を得るということである。脳の病気で命を落とす可能性もある。脳の病気を専門にする医師を受診することが重要であるが、耳鼻科医を受診することもお勧めする。内科系の先生では気づかない脳の異常に、眼振所見等から耳鼻科医が気づくこともあるからである。一人の医者では診断がつききらない、一度の診察では診断がつかないめまいがある。




    2013年6月22日 杏林大学公開講演会
    『聴こえのしくみと耳の病気』 医学部講師 増田正次


    杏林大学 広報・企画調査室




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