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公開講演会・公開講座

もしもあなたがコンビニエンスストアを開業するとしたら?(講演概要)

2015年10月3日開催:杏林大学公開講演会

総合政策学部講師
加藤 拓(専門:サービス・マーケティング、出店戦略)




    ○講演概要
     小売・サービス業の成功のカギを握るものは「立地、立地、立地」であると言われています。
     なぜなら小売・サービス業は、顧客が店舗に物理的に来店することで取引の実現が可能となるためです。しかし、立地の選定から、そこに店舗を建設し営業可能な状態にするまでの過程については、小売・サービス業のマーケティングの教科書では、ほとんどとり扱われてきませんでした。その理由は、これまでの小売・サービス業のマーケティングは、企業が短期的に変えられること、例えば商品や価格、広告宣伝、店内環境、従業員による接客などに関する施策を中心に扱ってきたことにあります。そこでは店内環境を切り取った範囲の中の戦略要素に関する議論が展開され、店舗の立地は与えられたものとして、または、店内環境とは別個の独立した要素として扱われてきました。その結果、個人が店舗を開業しようとする場合、店内環境に関する戦略要素については計画に余念がないものの、店舗の立地選定の際には、イメージや集客に関する楽観的な見通しをもとに出店判断をしてしまい、開業後に継続的に利益をあげていくことが困難になるケースが目立つように思われます。
     こうした状況に対して本講座では、店舗を開業しようとする方を対象に、立地によって客層や売り方がどう異なるか、開業するとしたらどのような立地を選ぶべきか、などを、クイズ形式のケーススタディを交えながら、分かりやすく解説することを試みました。最初に商圏と動線という2つの用語を紹介しました。「行き先」の反意語は「来し方」だそうです。店舗のお客さんに「来し方」、つまり店舗に来られる直前にいらした場所を尋ねて、それを地図上にプロットしてみてください。その分布がその店舗の商圏です。商圏とは、店舗のお客さんの「来し方」の地理的な範囲のことです。動線は「商業施設や都市における人や車の動きを示す線。方向・量・時間的変化などを表示し、出店計画の判断材料とする。」と定義しました。新規出店時にその立地を判断する際に、両者をよく確認する必要があります。  次に立地選定に関するクイズ1題を再掲させていただきます。

     <問>物件Aは、駅と高層オフィスビルを結ぶ動線上にあり、高層オフィスビルで勤務する大勢の勤め人が、そのビルに向かって平日の毎朝通勤のために通過している。平日は毎朝、高層オフィスビルで勤務する大勢の勤め人が通勤のために物件Aの直前を通過しています。午前8:30-8:40には物件前を、駅からオフィスビル方面へ450人弱が通過しています。コンビニやカフェなどを開業しようとする場合、物件Aをどう評価しますか?
     <考え方>与えられた情報だけを見ると、通行の量・質ともに安全な立地のように思えますが、それだけで判断するのは危険かもしれません。通行人のほとんどが勤め人ということで、勤め人の気持ちになって考えてみましょう。彼ら、彼女らの駅からオフィスに向かって歩くときの心境はどのようなものですか?多くの人は早くオフィスに着きたいという気持ちが強いはずです。途中の信号につかまり遅刻しないかとやきもきするよりも、より早くオフィス近くに着きたいと考えるため、歩く速さは普通よりも速くなりがちです。読者の皆さんはいかがですか? そう考えると物件Aの前は、通行量が多いからといって、来店する人が出現する確率も高くなるとは限らないのです。いくら人がたくさん通っていても、店舗を利用しようとする気持ちがない人が大半では商売上は意味がありません。このように人が目的地へ向かって単に通過するだけの意味を持つ動線があるのです。
     9:00以降の物件Aの前はどなるでしょう?通勤時間が終わり通行量は激減することが予想されます。外回りの勤め人が行ったり来たりの状態が午前中続いて昼時を迎えます。高層オフィスビルで勤務する人が、昼休みに物件Aの店舗に戻ってくることを期待するのは困難です。昼休み時間は限られていますから、行動半径は短くなるはずです。高層ビルの場合、勤め人はエレベーターで地上へ降りるのも一苦労です。また、勤務中は通勤に使う駅の方向にはなんとなく行きたくないものです。昼休みが終わり、再び外回りの勤め人が行ったり来たりの状態が夕方まで続きます。退社時間になり物件Aの前は、朝とは逆方向に駅へ帰路を急ぐ勤め人がいそいそと通過していきます。そして夜、ぱったりと人通りは途絶えます。この場合、通過動線上にある物件Aよりもむしろ高層オフィスビル付近に出店機会を待つ方が良いと考えるべきなのです。

     新規出店時の立地判断では、少しでも違和感のようなものをその立地に関して感じた場合、決して楽観的な見通しを立て、判断をするのではなく、潔く新たな物件情報を収集するゆとりも必要です。いついつまでに開けられる物件を探して開業するという方法は控えるべきでしょう。


    平成27年10月3日(土)『もしもあなたがコンビニエンスストアを開業するとしたら?』
    杏林大学総合政策学部
    講師 加藤 拓


    杏林大学 広報・企画調査室




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