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がんと遺伝子 〜乳がんからひも解く病気と治療〜(講演概要)

2015年12月19日開催:杏林大学公開講演会

医学部教授
井本 滋(専門:乳腺外科全般、外科腫瘍学)




    ○講演概要
    日本人女性の乳がんは増加傾向にあり、現在7万人を超える方が治療を受けています。
    がんとは正常な細胞が変化をして、無秩序に増殖する細胞の集塊です。周囲に浸潤し転移することで生命を脅かす疾患です。但し、しこりに気がついたり、マンモグラフィーやエコーで分かるまでには10年近くの歳月を要します。
    人間の細胞の中には核があり、その中には46本の染色体があり、各染色体には遺伝子情報(DNA)が書き込まれています。DNAからmRNA(メッセンジャーRNA)と呼ばれる鋳型が作られ、リボゾームという場所でアミノ酸に置換されて蛋白質が合成されます。あるDNAの中の塩基と呼ばれる部分が欠如したり、他の塩基に置き換わったりすることを遺伝子の変異と言います。変異した遺伝子からは、正常な蛋白質が合成できなくなり、その結果、無秩序に細胞が増えるようになって、最終的にがん細胞と呼ばれる状態になります。
    がん細胞には個性があります。乳がんでは、女性ホルモンの受容体であるER(エストロゲン受容体)、増殖因子の一つであるHER2(ハーツー)受容体、そして細胞分裂の目安であるKi67(キー67)を調べることで、どのような薬が効果的にがん細胞を死滅させることができるか検討します。
    特に、抗HER2剤による乳がん治療によって、劇的にがん細胞を死滅させることができるようになりました。
    また、重要な遺伝子を解析することで抗がん剤が必要かどうかを判定する多遺伝子アッセイ(検査)もありますが、本邦ではまだ保険収載されていません。
    さらに、がんの抑制遺伝子であるBRCA1、2(ブラカ1、2)が乳がん、卵巣がんの遺伝に関与していることが判明し、その遺伝子の変異を調べることで、ご自身あるいは血縁のある近親者が、どの程度、乳がんあるいは卵巣がんになるかも分かる時代になりました(保険未収載)。
    最近では、BRCA遺伝子の変異を狙った分子標的治療剤のグローバル試験も行われています。がんの解明が進む中で、個々の患者さんのがんの個性に相応しい医療、即ちprecision medicine(正確な医療)の時代がまもなく到来することでしょう。
     


    平成27年12月19日(土)『がんと遺伝子 〜乳がんからひも解く病気と治療〜』
    杏林大学医学部
    教授 井本 滋


    杏林大学 広報・企画調査室




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