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大学ホーム>ニュース&イベント>タイ日記 4

第4回
保健医療施設を見学

総合政策学部准教授 北島 勉

8月30日

昨日の夜から降っていた激しい雨も上がり、気持ちの良い朝でした。昨日同様9時に国際交流室に集合し、医学部に向かいました。今日のプログラムを担当してくれる医学部国際交流課のオークさんと合流し、コンケン市内のノングムア地区にあるプライマリ・ケア・ユニットに向かいました。プライマリ・ケア・ユニットとは、日本の保健所と診療所の機能をあわせた保健医療施設のことで、病気の治療、予防接種、妊産婦健診、健康教育などのサービスを対象地域の住民に提供しています。
ノングムア地区のプライマリ・ケア・ユニットでは、所長と看護師長が対象地域の特性やサービスについて説明をしてくれました。概要は以下の通りです:

対象地域の人口:約23000人。大学の近くに位置していることもあり、20代の人口が増えている。
常勤職員:看護師7人、薬剤師1人、事務職員4人。スリナカリン病院(コンケン大学病院)から医師が週3日診療のために訪れる。
患者数:1日30-40人が受診。糖尿病や高血圧症で定期的に受診している患者も200人いる。
その他:プライマリ・ケア・ユニットで対応できない患者は、スリナカリン病院に紹介することになっている。
説明はタイ語で行われました。英語や日本語に訳しながらだったので、学生は理解するのが大変だったのではないかと思います。辛抱強く聞き、所々で質問もしていました。

お話を聞いた後、プライマリ・ケア・ユニットの多目的室で地域の高齢者を対象にした運動と食事に関するプログラムを見学しました。このプログラムの目的は、高血圧症や糖尿病の予防や管理で、コンケン大学看護学部の教員と大学院生が技術的な支援をしていました。プログラム終了後、参加者のために用意された昼食会が始まりました。私たちも食事に招待してくださったので、予定にはなかったのですが、少しだけいただくことにしました。学生達は初めての東北タイの料理におそるおそる手を伸ばしていましたが、とてもおいしかったようで、結局昼食会が終わるまで食べていました。

棒を使った運動のデモンストレーション

棒を使った運動のデモンストレーション

初めての東北タイ料理

初めての東北タイ料理

午後は、スリナカリン病院の救急外来と病棟、産科、手術科を訪問しました。
救急外来では患者が外来に到着してから、治療を受けるまでのプロセスと、入院後の医療について見学をしました。1日150人が受診し、そのうち15人くらいの方が入院するそうです。救急外来には交通事故で運ばれてくる人が多いとのことでした。
産科では、出産間近の妊婦を受け入れる部屋、妊婦の状態をモニターする部屋、分娩室、緊急手術室を見学しました。大学病院なので、高リスクの妊婦が集まる傾向があり、1ヶ月間に約300の出産があるが、その3割が帝王切開によるものだそうです。

私事ですが、12年前にJICAの仕事でコンケンに赴任していたときに、二人目の子どもが生まれたのですが、妻が出産をしたのがこの産科でした。朝の5時頃に妊婦を受け入れる部屋の入り口で、2歳の息子と一緒に妻を見送り、数時間後に病棟で妻と再会しました。
妊婦を受け入れる部屋に入った後のことは全くわからなかったのですが、妻がどのように出産に至ったのかを、今日知ることができ、懐かしいような、不思議な気分でした。現在は、夫が出産に立ち会えるようになってきているようです。

救急外来にて

救急外来にて

産科の看護師さんと

産科の看護師さんと

手術科では、手術室用の服に着替え、21ある手術室を順々に訪ねました。
ほとんどの手術室が手術中でしたが、入り口の窓から中の様子を見ることができました。案内をしてくれた看護師さんが手術の概要を説明してくれました。肝臓がんの手術が2カ所で行われていましたが、東北タイは世界で一番肝臓がんの罹患率が高い地域とのことです。それは、生の川魚を食べるという食習慣が関係しているとのことでした。
見学後に手術科の看護師長に質問をすることができました。お坊さんの手術は男性だけでやるのかという質問が出ました。女性はお坊さんに触れてはいけないという仏教のきまりに関連した質問でした。病気の際には仏教のきまりよりも治療が優先されるので、女性の看護師もお坊さんに触れることができるとのことでした。
また、看護サービスを良くしていく上で最も必要なものは何かという質問に対しては、人材が必要という答えでした。看護師はまだまだ不足しているため、人材を確保するために、卒業後に一定期間就業することを条件に、看護学生に奨学金を出しているとのことでした。

タイの一次医療から三次医療までを駆け足で見学した一日でした。忙しい中、丁寧に説明をしてくださった職員の方々と、ノングムア地区の方々のホスピタリティーに感謝したいと思います。
 
(右の写真:スリナカリン病院の前で。前列左が医学部国際交流課のドゥアングアモーン課長、右がオークさん。後ろの像は、プミポン国王の両親。この病院の名前は看護師であった母親の名前からきている)