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金田一教授、講演を前に羽村市の情報誌で現代の日本語について語る

 杏林大学外国語学部 金田一秀穂教授は2008年3月20日、羽村市生涯学習センターゆとろぎで「日本語」に関する講演会を行います。
講演を前に、金田一教授が同センターのインタビューに応じている模様が季刊誌に掲載されましたので紹介します。
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金田一 秀穂(きんだいち ひでほ) 杏林大学外国語学部 中国語・日本語学科教授。
杏林大学、杏林大学大学院国際協力研究科で日本語学概論、言語文化相関論、言語と文化交流などを
教えるほか、多数のメディアに登場して日本語についてさまざまな角度から解説。著書多数。
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ゆとろぎ文化講演会を前に金田一秀穂先生を訪ねた
 日本語ブームである。日本語、漢字の検定が大流行り。クイズ番組やゲームも人気を集めている。日本語の常識と思っていたことが、案外に違っていたりする。そんなとき、日本語学者の金田一秀穂先生が「なるほど」と感心する解説をしてくれる。
 その金田一秀穂先生を研究室に訪ねた。現代の日本語事情や世代間の言葉の摩擦、「若者語」、メールでの言葉の使い方などについて聞いてみた。

昨今の日本語事情について

金田一 「敬語が苦手だから」とか「失礼があってはいけない」とか、考え過ぎて変に緊張したり、丁寧過ぎて、おかしくなってしまっていることがあるでしょ。(言葉は)もっと気軽に使っていいと思いますよ。

「気軽」って、どういうことですか?

金田一 「(使い方を)間違えたらどうしよう」などと考えない方がいいということなんです。精神的なゆとりが乏しくなった、ということですかねえ。
 スポーツ選手がよく、「楽しんでプレイします」と言うでしょ。もちろん心からそう思っている人もいるでしょうが、あれは、一種の自己暗示でしょうね。プレッシャーを忘れようと。現代のマルかバツかの二者択一的に決めたがる風潮も影響していますね。「楽しみます」か、「プレッシャーに負けそうです」かのどちらかなんですね。最近、わりと厳しくないですか。もっと曖昧でいいと思うんですよ。「楽しみたいけど、難しいです。でも楽しみたいと思います」とかね。日本語は本来、もっと曖昧な表現を好むんです。
 決まりきった言い方というのは、安心かもしれませんが、かえって生気が失われてしまうものです。本当に言いたいことが言えなくなってしまう。ですから、私たちが普段に使う日本語は、どれも美しく、どれも正しいし、自分の気持ちをいちばん表現できる言葉が「いい言葉」だと言える。

「日本語が乱れている」とよく言われますが。

金田一 「乱れている」ではなくて、「変化している」のです。変化するのは仕方のないことです。「乱れている」と言いたい気持ちはわからなくもない。人は言葉に対しては、保守的にならざるを得ないから。自分が若いときに身につけた言葉が現在の自分を形作っている、いわばアイデンティティーになっているわけです。それを汚されるのはつらいですよね。でも、現実は変化せざるを得ないし、自分たちも変化させてきたのです。だから、変化を「よくないこと」と、とらえるのではなく、変化を停めるブレーキ役になればいいのだと思います。

最近、何を聞かれても「微妙(びみょう)」の一言ですませる若者が多いですね。

金田一 若者には若者特有の表現があり、おじさんにはおじさん特有の表現があります。それは、自分たちの連帯感、仲間意識を高めたい、でも、教えたくない人からはちょっと離れたい、そういう働きがあります。
 若者は、新しい時代に生まれて、出来合いの言葉では自分の気持ちを表現できない、と思うわけですよね。自分の気持ちを表現できる言葉が「いい言葉」であって、違う言葉をもってきて自分の気持ちを表現できると思えば、それを使う。相手も理解しやすい。なんの文句も言えません(笑)。
 僕らの世代にも、「総括」とか「ナンセンス」とか、それを使っていれば分かり合える言葉がありますよね。だから、若者がおじさんに若者語を使ってはいけないし、おじさんがおじさん語を若者に使って、理解されないからと怒っても仕方がない(笑)。

表現が「上手」、「下手」ということが関係しますか?

金田一 言葉で自分の考えをすべて表すことができると思わない方がいいですね。せいぜい60%くらいを表せればいいのではないですか。
ただ、言葉のプロ、新聞記者や教師、政治家はきちんとした言葉を使うべきですね。僕も含めてね。「女性は子供を生む機械」発言で批判された政治家が「私は国語力がないので」と弁明していたでしょ。でも、政治家は言葉を商売にするプロではないですか、それが「国語力がない」と言い訳するのは、いただけません。

メールでは、よけいに敬語の使い方が難しいです。

金田一 身についていない敬語を使ってしまうことがありますね。電子メールのフォーム(形式)がまだ決まっていないので難しいところです。もう少ししたら、「これが正しいメールの作法」みたいなものが決まってくるでしょうが、まだ揺れ動いている状態ですね。そこがまた面白いのですが。形は自然にできてくると思います。流行によって変わる可能性もありますしね。


▼お父上の春彦氏は、戦時中、羽村に疎開していたそうで、学生の中に羽村っ子がいるとも。不思議なご縁である。▼飾りのない語り口はテレビで拝見する金田一先生そのもの。ことばに対する愛着と人への優しい眼差しを感じた。3月の講演会が楽しみである。

(取材/日下田まや)
季刊ゆとろぎ 2008 年新春号(通巻第8 号)より


【ゆとろぎ文化講演会】
講師 杏林大学外国語学部教授・日本語学者
金田一秀穂 先生

日時■2008年3月20日(祝) 開演14:00(開場13:30)
会場■生涯学習センターゆとろぎ小ホール(入場無料)

※未就学児の入場はできません。一時保育(有料・要予約)がありますので、 
 ご希望の方はゆとろぎへお申し込みください。
※駐車場に限りがあります。ご来場の際は市内循環バス「はむらん」をご利用
 ください。
※問い合せは生涯学習センターゆとろぎ. TEL 042(570)0707へ


2008.1.15