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【トピックス】 日本と中国・新彊第1回医学学術シンポジウム 出張報告

杏林大学総合政策学部 客員教授 松井 啓


はじめに

  本大学医学部の卒業生である在日新疆ウイグル医科大学校友会のハミット会長の昨年来の提唱で本年9月中旬に新疆ウイグル自治区の首都ウルムチでこのシンポジウムが開催されることとなり、私も参加することとなった。ところが、外務省の「海外安全情報」(当分の間、不要不急の渡航は控えてください)が災いして、14名の日本側参加予定者が次々とキャンセルして私がウルムチに到着した時点で、私が日本からの唯一の参加者であることが判明した。
  ちょうど断食月の最中であったにも拘らず(ウイグル人はムスリムであるので陽のある間は飲食しない)、日本側代表の私を「熱烈歓迎」し、公式会議の他に、副学長以下幹部が、昼夜となく飲食会を主催してくれた。(写真:公式会合で記念品の贈呈)

折角の機会であるので、馴染みの薄いこの地方の概要、及び、学術交流の相手である新疆ウイグル医科大学の概要を紹介する。今回初めてのこの会合が、来年の本格的な交流の始動につながることを期待している。

1.新疆ウイグル自治区概況


  面積は166万平方キロメートル(中国領の6分の1占める最大の地区、日本の約4倍)、天山山脈、崑崙山脈やアルタイ山脈に囲まれたタリム盆地とジュンガル盆地があり、南には世界第2のタクマラカン砂漠があり、その南はチベットである。インド、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、キルギス、カザフスタン、ロシア、モンゴルと国境を接する。ここは中露係争の地であったが1955年に至り中国の支配下に確定した。(上段:中国の地図の茶色部分が新疆ウイグル自治区)
  1948年のこの地域の人口は4百万人、そのうちウイグル人3百万人(75%)、カザフ人40万人(10%)、漢人24万人(6%)であったが、今回入手した資料によれば(調査時期明記なし)、現在の総人口1925万人、47民族から成り、うちウイグル人は834.56万人(43.35%)、漢人828.04万人(43.02%)、カザフ人124.5万人(6.47%)となっており、漢人の人口が急増したことが見て取れる。その他はフイ(回族)人83.98万人、蒙古人14.99万人、キルギス人15.88万人などの少数民族である。
  新疆ウイグル自治区には、地下資源が多く、特に石油と天然ガスは豊富であり中国政府はその開発に力を入れ、大規模な漢人の入植政策を進め、産業道路、高速道路、首都圏幹線道路の立体交差化などの経済インフラ建設を急速に進めており、ウルムチは高層ビルが乱立し、13年前に訪問した時に唯一の高級ホテルであった25階建てのホリデイインは埋没してしまっていた。(中段写真:ウルムチ市街)
  郊外の観光地に向かう道路は幅が広くアスファルト化されており、沿道には所々に稼働中の油井が見られ、時には黒煙を噴き上げる大型工場も見られ、1960年代のソ連の地方都市のコンビナートを髣髴させた。ウルムチは自動車数と工場が増えたため朝夕のラッシュアワーの渋滞は激しく、排気ガス規制が緩いことと盆地でもあるため大気の汚染が激しく、風がないと太陽が曇るほどであった。(下段写真:ウルムチ市内バザール)

2.新疆ウイグル医科大学の概要 

  この大学は1956年に医学院として設立され、1996年には医科大学に昇格した。江沢民主席自らが正門の上の大学の看板の字を描いた(大学の誇りにしているようだった:上写真)。
  現在大学には21の学部(学院)と6つの病院と漢方(中医)専門部門がある。
  大学の総面積は173.3万平方キロメートル、学生数は12,396人、博士115人、研究生1,411人、修士(7年制)629人、留学生495人(パキスタンが最も多く、続いてアフガニスタン、タジキスタン、スーダン、クウェート、カザフスタン、ロシア等、日本人は一人卒業した)、その他短期留学生がいる。
  大学の職員は6,292 人、教員は1,688人(除く、病院)。学術科学研究は40を超えており、図書館の蔵書は120万冊、インターネットの検索システムも導入している。病院のベッド数は6,000床であり、更に増加させる。(下写真:附属病院)
  外国との関係では、アメリカ(Harvard Medical International)、イギリス(Birmingham University )、フランス(Bordeaux University)、ロシア(St. Petersburg University)、との交流があり、パキスタンとの関係は深く、ムシャラフ大統領自ら大学を訪問し、種々医科大学との交流と留学生の受け入れをしている。
  日本とは、日本大学、日本医科大学、長崎大学、秋田大学、旭川医科大学などへの訪問や研修生派遣がある。
  なお、全体会議の際、外事部長から杏林大学との学生交流の希望があったので、当大学で関心があれば具体的にどのような交流ができるのか検討して先手を打つことも考えてはどうだろうか。



(2008.09.29 記す)