入学生の皆さんへ 学長・跡見 裕
4月3日(日)に予定していた平成23年4月杏林大学入学式は、このたびの大震災に鑑み、やむなく中止いたしました。本来ならば当日行う予定でした学長式辞に代えて、入学生の皆さんへの学長メッセージを下記に掲載いたしました。
去る3月11日に発生した東日本大震災で亡くなられた方は、既に1万名を超し、行方が知れない方も2万名に上らんとしております。何十万人の避難をされている方々も、きわめてつらい生活をお過ごしのことと思います。
まず、亡くなられた方のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様に心よりお悔やみをもうしあげましょう。
震災から3週間になろうとしておりますが、原子力発電所の事故は未だ深刻なものであり、そのほか社会的混乱が続いております。本学に入学される学生で、連絡の取れない方がいますし、在学生でも被災された方が少なくありません。このような状況を鑑み、入学式を中止することにいたしました。新入生、ご家族の皆さんが、楽しみにされていた式典ではありますが、なにとぞご理解をいただきたくお願いいたします。
皆さんが入学される杏林大学には、医学部、保健学部、総合政策学部、外国語学部の4学部と、医学研究科、保健学研究科、国際協力研究科の3大学院、加えて医学部付属看護専門学校があります。三鷹と八王子に分かれたキャンパスがあり、豊かな自然と都会の繊細さを楽しみながら勉学のできるところです。私たちは、医学、自然科学、人文科学の学部を有していることの利点をより有効に、かつダイナミックに生かそうと考えて、様々な検討を重ねてきました。例えばその一つに、学際的授業の推進があります。これは、一つの学部にこだわらず、他学部の授業を受けたり、他学部教員の講義を聴く機会をより多くしようとするものです。学生間の交流も深まるでしょうし、なにより新しい分野、未知の分野に触れることで、自身の学びにもよりよい影響を与えるものとなります。また八王子にある大学との連携を生かし、他大学との単位互換も進めております。このほかにも、学生支援センターを中心とした教学支援の取り組み、新たな奨学金制度の制定、キャリアサポートセンターによる資格習得や就職相談の充実などが図られています。皆さんはこれらを活用して充実した学生生活を過ごしてください。
さて新入生のみなさん。今私たちは大きな社会的混乱のときにあります。とくに被災者の方々は物質的、精神的、肉体的に大変な状況での生活に堪え忍んでおられます。当然のごとく、これは被災者の皆さんの問題だけではなく、私たちが共有すべきものではないでしょうか。このような状況でこそ、他人を思いやる心、人と人との絆を大切にする事などが求められるのです。私たちの建学の精神は“真善美の探求”であります。人として他者への思いやりの心を持ち、それをいかに実践するかがこの建学の精神なのです。本学での学びを通じて、社会へ貢献できる何かを身につけてください。かって、フランスの哲学者は“他人を幸せにするには、自身の中に幸福を有していなければならない。待っているだけでは幸福になれず、それを得るには意志と行動が必要である、”と言っています。建学の精神を実体化することが、今求められているのです。
杏林大学は平成26年に創立50周年を迎えます。まさに新しい時代を迎え新しい学生諸君を迎えたことを心よりうれしく思います。さらに皆さんのこれからの絶え間ない努力を期待します。
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2011.04.04