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岩手県災害派遣を終えて 被災地支援報告[5]

法医学教室助教 浅原千歩


 私は4月1日〜7日の日程で、警察庁から日本法医学会を通じて派遣要請を受け、岩手県において災害時死体検案支援活動を行ってまいりましたので、ご報告させていただきます。

 私の災害派遣が決まったのは3月29日でした。すでに当法医学教室では高木徹也准教授、松村桜子准教授(兼担)が3月14日〜18日の日程で宮城県での災害時死体検案支援活動を終えていましたので、先生方から大まかな被災地の様子は伺っていました。しかし、法医学教室に入って一年目の私が実際に被災地に赴きご遺体を前にした時、何が出来るのだろうかと不安でした。

 一週間の派遣期間中に釜石市、大槌町、陸前高田市で検案活動を行い、合わせて約40体の検案を行いました。盛岡に滞在していましたので、片道約2時間半〜3時間かけて各方面まで車で移動する日々でした。津波災害の情報はテレビなどで得ていましたが、やはり現場を目の前にすると何も言葉が出ませんでした。震災から3週間が経ち、海はとても青く平静な様子に対し、陸は依然瓦礫の山という光景が深く印象に残りました。

陸前高田市・米崎中から見た広田湾

陸前高田市・米崎中から見た広田湾


 遺体安置所は主に小中学校等の体育館を利用していましたが、電気・水道は通っておらず、限られた水でご遺体に付いた泥を丁寧に取り除きながら検視・検案業務が行われました。業務は岩手県警をはじめ各県警がチームとなり、とてもスムーズに行うことができました。遺体安置所には数百体の身元不明遺体が棺に入って安置されており、その中を家族が行方不明者を捜しに来られるため、検視・検案をする際は、仕切りなどをうまく用いて、家族に見えない様に配慮をする必要がありました。仕切りのすぐ向こう側でご遺族の悲しむ声が響きわたる状況に何度も遭遇しました。

 遺体安置所は各方面3ヶ所以上ありましたので、毎日のように安置所を巡り、行方不明者の手掛かりがないか探している方が大勢いました。探していた方が見つからなければ、いつまでたっても残された方々がこれから先に向け、第一歩が踏み出せないのではないかと思いました。そのためにも私たちが亡くなられた方の死因を判断することはもちろん、その方の持つ特徴を一つでも多く見付けられるように診て、一人でも多くの不明者を減らさなければならないと思いました。

 被災地では自衛官、各都道府県から来られている警察・消防、医療スタッフ、ボランティア等本当にたくさんの方々がそれぞれの支援活動に懸命に取り組まれていました。滞在地の盛岡市内と沿岸部とを結ぶ道に、手作りの看板や、のぼりがいくつか設置されている様子が目に留まりました。それには「救護ごくろうさまです」「今日も一日ありがとうございました」など激励や感謝の言葉が書かれていました。被災された方から心温まる言葉に、私自信も励まされた気がしました。私たちの検案支援活動は直接的に誰かの命を救うことはできませんが、私たちの出した結果により残された方々が次の第一歩を踏み出すきっかけとなるのであれば、大変意義のある活動なのではないのかと思いました。

 4月30日からは高木准教授が2回目の災害派遣に向かいます。現地では短期的な支援だけでなく、細くても長期にわたる支援が必要であり、今後当法医学教室一同、長期的な支援をしていきたいと思います。

 最後になりましたが、東北地方太平洋沖地震及び津波災害に遭われた全ての方々にお見舞いを申し上げますと共に、お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。また、被災地で懸命に支援活動に取り組まれている全ての方々に感謝の意を表します。

2011.04.22