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医学部感染症講座 γδT細胞のマラリアに対する防御免疫応答メカニズム解明

〜米国科学アカデミー紀要(PNAS)の電子版に掲載〜

 杏林大学・医学部・感染症学講座(寄生虫学部門)の小林富美惠教授と井上信一助教らは、自然免疫リンパ球の一種であるガンマデルタT細胞が樹状細胞を活性化させるメカニズムを発見し、その機能がマラリアに対する防御的な免疫反応に必須であることを明らかにしました。

 マラリアは、HIV/エイズや結核とともに、人類にとって最も脅威を与えている感染症とされています。マラリア原虫に感染すると、ガンマデルタT細胞が末梢血や脾臓において増加することなどから、ガンマデルタT細胞がマラリアにおいて何かしらの働きがある事が示唆されてきました。しかし、それが具体的にどのように働いているのかについては明らかにされていませんでした。

 今回、小林富美惠教授らの研究グループは、遺伝子改変によって作製されたガンマデルタT細胞をもたないマウスにマラリア原虫を感染させ、その免疫的機能を詳細に解析しました。その結果、ガンマデルタT細胞をもたないことにより、マラリア原虫に対する防御免疫機能が著しく低下することがわかり、ガンマデルタT細胞がマラリアに対して防御的に働いていることが明らかとなりました。また、ガンマデルタT細胞が抗原提示細胞である樹状細胞の活性化を強く促進することで、マラリアに対する免疫機能を向上させていることを突き止めました。

 マラリア原虫は宿主の免疫機構を回避する巧妙な仕組みをもっていて、人類は未だに有効なワクチンの開発に成功していません。今回、マラリア原虫に対する宿主の防御免疫のメカニズムの一端を解明したことにより、ワクチン開発の重要な手がかりとなる可能性があります。また、ガンマデルタT細胞はマラリアのみならず細菌やウイルスの感染症においても防御免疫作用をもつことが示唆されていますが、そのメカニズムは明らかにされておらず、今回の発見により、様々な感染症の防御免疫メカニズムに関する研究を大きく前進させることが期待されます。

 本研究は科学研究費補助金(基盤研究C, 若手研究B), 国際科学技術財団と守谷育英会の研究助成金により支援されました。本研究成果は米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」の電子版(2012年7月9日付け)に掲載されました。


  >>プレスリリース(概要、研究の背景・内容、今後の展開について等)

2012.07.13