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医学部後藤教授が最終講義 「Mycobacterium kyorinenseのさらなる解明を」

この3月で定年を迎える本学医学部長で呼吸器内科学の後藤元教授の最終講義が2月26日(水)、大学院講堂で行われ、自らの臨床経験をもとに4半世紀にわたる呼吸器感染症との闘いを振り返るとともに、本学で発見されたMycobacterium kyorinense のさらなる解明を後進に託しました。

最終講義は「呼吸器感染症・耐性菌との闘い〜四半世紀の軌跡〜」のテーマで行われ、はじめに、“古来、人類をもっとも多く殺戮してきた”肺炎球菌について、引き起こされる疾患別の推移や菌の特性などについて、学生への授業そのままにわかりやすく語りました。
そして抗菌薬が使われていく過程でペニシリン耐性をはじめ抗菌薬耐性の肺炎球菌が増加の一途をたどってきたと説明し、特に日本は欧米に比べ耐性菌分離の割合が高いと抗菌薬の大量使用に警告を促しました。
後藤教授はさらに、時代の変遷とともに新しい耐性機構が生じ高度耐性菌が増加している現状を示し、使用頻度が高まりつつあるフルオロキノロンを今後も抗菌薬の切り札として残せるかどうかが課題になると述べました。

講義後半は、2009年に当院呼吸器内科の入院患者さんから見つかり、臨床検査部に所属していた岡崎充宏博士(当時副技師長)により同定された新菌種(非結核性抗酸菌)について言及しました。
この新菌種は「杏林」の名をラテン語風にしてMycobacterium kyorinense (マイコバクテリウム キョウリネンス)と命名され、世界的に権威ある雑誌International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology の2009年6月号第59巻に掲載されています。
このいわゆる“杏林菌”は国内だけでなくブラジルでも患者さんから分離されていて、これまでにわかっているだけで9例中5例が死亡しているということです。
講義の最後に後藤教授は、「Mycobacterium kyorinenseの病原性や感染性、治療法などはまだわかっていません。新菌種を発見した責任において、また患者さんから託されているとの思いを持って、ここ杏林大学で解明してほしい」と後に続く研究者に呼びかけました。

教室を託された滝澤始教授は「後藤先生は日本感染症学会の権威ある賞の二木賞を受賞するなど、呼吸器感染症の領域で多大な業績を上げられました。また、4年間医学部長を務めるなど本学での13年間、多数の医療人を輩出され、毎年のようにThe Best Teacher of the Yearを受賞し学生から絶大な授業評価を受けられました」と功績をたたえるとともに感謝の言葉を贈りました。

最終講義には医師や看護師、技術職員や事務職員など約150人が耳を傾け、講義を終えると、医局をはじめ外来、病棟などの看護師や看護専門学校の関係者などから次々と花束が手渡され、聴講者から慰労と感謝の拍手がいつまでも続きました。

2014.2.28