病理学の基礎は病変=病気による生体組織の変化を細胞レベルで理解する事にあります。そのために、顕微鏡を用いて組織を観察する実習が、これまで行われてきました。しかし、顕微鏡を両眼で自然に視られるようになるには時間がかかり、どこを見てよいかわからない、何を見ているかわからないといった不満を持つ学生もみられました。
最近の画像技術の進歩により、顕微鏡を用いずにコンピューターの画面上で組織標を観察するバーチャル顕微鏡が開発されています。杏林大学の医学部の実習でも3年前から、CBT用のコンピューター室を利用して、バーチャル顕微鏡実習を試みてきました。今回、このバーチャル顕微鏡実習をさらに一歩進め、基礎棟にWi-FiとiPadを利用した実習システムを国内の医科大学では初めて構築し、先日このシステムを用いたバーチャル顕微鏡実習を行いました(平成26年1月15日)。
全員が同一の組織標本を観察できる、画面上で疑問点をピンポイントに確認できるといったバーチャルスライドの特徴に加え、今回のiPadを利用した実習システムでは、視野の移動や拡大・縮小といった操作が指を使って直感的にスムーズに行えるようになり、学生はより早く・深く理解できたようです。さらにiPadは持ち運びが自由なため、これまで友人や教員をモニターの前まで呼んで質問していた作業を自分自身が移動してでき機動力が高まり、質問する機会が増えたようです。
Wi-FiとiPadを使ったバーチャル顕微鏡実習を導入したことで、病気による生体組織の変化をより早く、より深く理解する環境ができたと考えられます。