2014年5月、本邦のがん臨床研究・治療におけるリーダー的グループである日本臨床腫瘍グループ(通称JCOG:Japan Clinical Oncology Group)の大腸がんグループにおきまして、杏林大学が登録症例数トップ10に入り表彰を受けました。本邦では、医学の進歩に重要なエビデンス構築のための臨床研究が2000年以降盛んになり、欧米に引けを取らない多数症例での前向き無作為試験(ランダム化臨床試験)もすでに珍しいものではありません。これらの研究結果は、各がん腫における治療ガイドラインの構築や改訂に不可欠なものとなっています。JCOGグループは、国立がん研究センターが中心となり、本邦の主だった多くの施設が参加しています。消化器がんに限らず、肺がん、血液リンパ腫、軟部腫瘍、乳がんなど16のグループがあります。その中でも大腸がんは患者数が多く、2002年からJCOG大腸がんグループとして活発に活動を行っています。本グループはJCOGグループの中で参加施設数が最も多く(凡そ60施設が参加)、これまでも重要な研究成果を報告してきました。進行大腸癌の腹腔鏡手術適応に関する研究(JCOG0404)や進行直腸癌における側方リンパ節郭清の意義に関する研究(JCOG0212)などは世界に発信できる研究として最終結果が待たれているところです。杏林大学が今回受賞できた背景として、本教室が初年度から積極的に参加してきたことがあげられます。すでに12年を経過した現在も継続的に症例の登録を行っており、こうした継続性が今回の受賞に結びついたと考えられます。
また、大腸がんでは転移・再発症例も少なくなく、近年では抗がん剤治療が重要な治療法として確立しております。杏林大学では、国内でもいち早く2008年に抗がん剤治療専門の腫瘍内科が講座として発足しました。古瀬教授や長島准教授はじめ腫瘍内科の先生方のご尽力のおかげで今回の受賞に繋がったと考えております。今回の受賞ではトップ10のほとんどが、がんセンター系の病院が占めております。その中での受賞は、大学病院としても、また私立の施設としましても唯一でした。
数多くの参加施設の中でトップ10内にとどまることはとても大変なことと存じますが、今後とも皆で力を合わせて杏林大学のために頑張って参りたいと存じます。