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タイのチェンマイでJICA草の根技術協力事業のキックオフミーティングと研修会を開催

 平成29年10月16日から、草の根支援協力事業「北タイの保健センターにおけるHIV感染症ケアの強化事業」がタイ国チェンマイ県サンパトン郡で始まりました。これは、杏林大学と国際協力機構(JICA)が政府開発援助として共同で実施するプロジェクトです。

【プロジェクトの概要】
 現在、サンパトン郡には約1200人のHIV感染者がおり、サンパトン地域病院や同郡内にある18カ所の保健センターにおいて、HIV感染者への医療サービスが提供されています。同郡で実施された杏林大学とチェンマイラチャパット大学との共同研究の結果、保健センターでのHIV感染症ケアを担当する看護師への技術的なサポートが不足していることや、保健センターと地域病院間の患者情報の提供がスムーズに行われていないこと等の問題点が明らかになりました。
 そこで、このプロジェクトでは、保健センターの看護師のHIV感染症ケアに関するスキルを向上させることと、地域病院と保健センター間の患者紹介の仕組みを改善することを主な目的としました。

【キックオフミーティング】
 12月14日に、サンパトン地域病院において、プロジェクトのキックオフミーティングが開催されました。サンパトン地域病院でHIV感染症ケアを提供している医療スタッフと保健センターの看護師など約30名が参加しました。サンパトン地域病院のウィラット病院長、このプロジェクトのタイ側のカウンターパートで、チェンマイ県全体の保健医療サービスを管轄しているチェンマイ県衛生局のワランユー副局長、杏林大学からはプロジェクトコーディネーターの私(北島)が、それぞれ挨拶をした後に、本プロジェクトの現地調整員をお願いしているチェンマイラチャパット大学のサイユッド講師が、プロジェクトの全体像の紹介を行いました。

【研修会】
 キックオフミーティングに続き、研修会が開催されました。今回は、杏林大学医学部総合医療学教室感染症科の河合伸教授と杏林大学病院でHIV/AIDSコーディネーターナースをされている佐野麻里子看護師に講演をしていただきました。河合教授は、The medication and management of HIV/AIDS in Japan(日本におけるHIV/エイズの治療と管理)というテーマで、日本のHIV感染症の状況、医療サービス提供の仕組み、杏林大学病院におけるHIV感染症診療の実際についてお話いただきました。また、佐野看護師はHIV/AIDS Nursing in Japan(日本におけるHIV/エイズの看護)というテーマで、HIV感染者へのケアにおけるHIV/AIDSコーディネーターナースの役割を中心にお話をして下さいました。日本では、HIV感染症の治療薬を決める際に、患者の意向を聞いたりすることや、病気や薬品に関する詳細な情報を、時間をかけて患者に提供したりすることに驚いていました。講演後、患者の治療中断の状況、アルコール依存や薬物使用とHIV感染症ケアの問題、病院と保健所との連携の状況、医療費の患者負担などについて、活発な質疑応答がなされました。

講義を行う河合伸教授

講義を行う河合伸教授

講義を行う佐野麻里子看護師(右側、右から1番目)

講義を行う佐野麻里子看護師(右側、右から1番目)

 お昼休憩を挟んで、サンパトン地域病院でHIV感染症の治療を受けながら、ボランティアとして他のHIV感染者の支援を行っている方から、患者の視点からのHIV感染症ケアについてお話を伺いました。保健センターの看護師のHIV感染症に関する知識や患者とのコミュニケーション力の向上に対する期待が述べられました。次いで、本プロジェクトのフィールドコーディネーターをお願いしているチュラロンコン大学医学部のミョー先生の司会のもと、上述したサンパトン郡での研究結果や、講演の内容などを参考にしながら、保健センターの看護師を対象としたHIV感染症ケアに関する研修の内容についてワークショップが行われました。
 最後に、ウィラット病院長から、閉会の挨拶として、このプロジェクトを通して、保健センターを中心とした新たなHIV感染症ケアのサービス提供モデルが構築されることへの期待が述べられました。

 

このプロジェクトの実施期間は2年間です。今後、プロジェクトの目的を達成するための様々な活動が行われる予定です。その様子を、時々報告させて頂きたいと思います。

2017.12.19
総合政策学部教授 北島 勉


本プロジェクトの概要については、こちらをご覧下さい:
https://www.jica.go.jp/partner/kusanone/shien/tha_02.html