中米・エルサルバドルでは現在、救急患者の病院搬送までの病院前診療について、制度・体制・機能の整備強化を検討しています。
このプロジェクトは、日本の独立行政法人国際協力機構(JICA)が支援していますが、同国には本学医学部付属病院 高度救命救急センターの山口芳裕センター長がたびたび訪れて医療指導を続けており、今回の本学の支援もこれがきっかけになりました。
今年1月には、同国の保健省副大臣等が高度救命救急センターを視察に訪れており、それに続く今回は行政の関連部門やNPOの代表者等らが来訪し、救急救命士を育成する本学保健学部救急救命学科と高度救命救急センターの視察を行いました。
初日の4月23日午前、井の頭キャンパスに到着した一行7名は(同国保健省救急医療局・病院前診療課長、保健連帯基金の代表、国家文民警察救急部長、消防庁長官、同国赤十字社、緑十字社の各代表、救助部隊理事長)は、神谷 茂保健学部長から学部の概要説明を受けました。
キャンパスの複数の施設を見学した後、救急救命学科の千田晋治特任教授と阿部和巳特任准教授から、実習で使用する器材や救急車について説明を受けました。一行は、豊富な実習機材や整備された救急車に高い関心を寄せながら、質問を重ねていました。午後からは、山田賢治教授による学科説明や4年生の実習を見学し、教授陣との質疑応答で視察を終えました。
翌24日には、高度救命救急センターを訪問し、山口芳裕センター長をはじめ、海田賢彦医局長など医局員一同の案内で、1・2次救急と3次救急の処置室や第3病棟のヘリポートや東京DMATカーなどの視察をしました。
一連の視察を終えた一行は、本学関係者へ謝意を述べると共に、「大学が消防機関と連携し、救急救命士育成の実習を行っているなど、連携体制が整っている点が参考になった」、「日本で目にするものは、まるで雲の上の世界のようだ。しかし、われわれは身の丈にあったことから少しずつでも日本から学んでいきたい」などの感想を述べていました。
長くプロジェクトの支援に携わってきた山口センター長は、「長年の内戦状態ですべての社会インフラが失われた中で、病院前救護体制を構築するのはたいへんなご苦労だと思いますが、そうした努力が特に若い世代の命の大切さの気づきにつながり、平和な国造りの一助となることを心から願っています」と話しています。