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台湾の放射能災害リスク対策に協力 本学付属病院高度救命救急センター

 放射能災害リスク対策の策定に取り組んでいる台湾の関係者が、調査視察のため7月5日に本学医学部付属病院 高度救命救急センターを訪問しました。
 今回来訪したメンバーは、台湾行政院原子能委員会 原子力技術部の幹事、課長、台湾大学付属病院救急部の主任教授、銘傳大学都市計画・防災管理学科准教授を含む、「台湾放射線災害予防・救援実践調査及び減災対策研究チーム」の5名です。

 本学医学部付属病院は、東京都からNBC災害(※1)に対応する東京DMAT(※2)特殊災害医療機関(都内3施設の1つ)に指定されています。その中核となる高度救命救急センター長の山口芳裕教授は、2011年の東日本大震災発生当時、東京DMAT隊および、日本救急医学会が組織する福島第一原発事故緊急ワーキンググループの委員長として、現地の最前線で作業員や救命員達の被ばく管理を行うなど、災害対応に尽力しました。また、東京消防庁特殊災害支援アドバイザーを務め、2020年東京五輪・パラリンピックに向けた、テロなどに対する救急施策について、助言や止血帯(ターニケット)の導入・指導などを行っています。

 高度救命救急センターに来訪した一行は、放射性物質による被ばくの救急対応、当院の東京DMAT NBC対応特殊チームの活動などについて、資器材の紹介を交えた説明を受けた後、質疑応答を行いました。

被ばく時の救護対応等を説明する吉川助教

被ばく時の救護対応等を説明する吉川助教

 まず始めに吉川 慧助教は、外部・内部被ばく量の計測方法や汚染状況に応じた危険区域のゾーニング方法、患者の治療優先順位を決定するトリアージ方法、救助者の被ばく対策などについて、東日本大震災発生時に現場で救助活動にあたった山口センター長等の記録写真を交えて説明しました。
 続いて、五十嵐 昴助教は、東京DMATの仕組みや、通常の災害医療対応チームと特殊災害医療チームの2種類について説明し、現場や訓練で使用する線量計、防護服などの資器材を紹介しました。
また山口センター長は、消防庁と医療機関が連携をして現場で救護活動を行う東京都のDMATの特異性や災害のレベルに応じたチーム編成、訓練などについて説明しました。

DMATの資器材を紹介する五十嵐助教

DMATの資器材を紹介する五十嵐助教

訓練で使用する防護服等

訓練で使用する防護服等

山口高度救命救急センター長

山口高度救命救急センター長

頂戴した感謝状

頂戴した感謝状

 一行からは、「汚染区域で救護をする医療従事者などの恐怖心をどう克服するのか」、「大都市で災害が発生した際は、どのようにゾーニングをするのか」、「オリンピックでの対策方法は」、「今までの経験を踏まえ、改善すべき課題はあるのか」など、次々と山口センター長へ質問が寄せられました。
 放射能災害について経験のない一行は、日本や当院での取り組みについて強い関心を示し、高度救命救急センターの協力に謝意を述べ、当院を後にしました。
 一行は、当院への訪問に前後して、福島県飯舘村や福島大学、福島復興局、東京消防庁などを訪れた後、帰国しました。
 今回の訪問を受け、山口センター長は、「台湾は東日本大震災の際にも、諸外国に先駆けて救援の手を差し伸べてくれた大切な友好国です。これまでも、救急・災害医療の分野でさまざまな交流を行ってきましたが、今後もさらに関係を深めたいと思います」と話しています。

※1 NBC災害: 核物質「Nuclear」、生物剤「Biological」、化学剤「Chemical」、によって引き起こされる災害
※2東京DMAT:災害時に、消防庁と医療機関が連携して現場や医療施設内で傷病者を救護するための組織として、東京都が編成

2018.07.09