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世界で例のない精神科治療ガイドライン「EGUIDEプロジェクト」が最初の成果

 「EGUIDEプロジェクト」は、精神科医への教育・普及・検証活動により、精神科治療ガイドラインへの理解度が向上するという、最初の成果をあげました。この結果によって、今後より適切な治療が全国で広く行われることが期待されています。

 世界で例のないプロジェクト
 「EGUIDEプロジェクト(Effectiveness of GUIdeline for Dissemination and Education in psychiatric treatment)」とは、精神科医に対して精神科治療ガイドラインを普及・教育するための講習を行い、その効果を検証する研究です。
 本学医学部精神神経科学教室の渡邊衡一郎教授や国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター、東京女子医科大学等らの研究グループで2016年から取り組んでいます。現在では、43大学と130以上の医療機関が参加する世界でも例がない精神科治療ガイドラインの教育・普及・検証プロジェクトに発展しています。
 講習には、統合失調症薬物治療ガイドラインとうつ病治療ガイドラインの2種類があり、全国で計68回行われ、延べ1,500人以上の医師が参加しました。

<center>EGUIDEプロジェクトの全体図</center>

EGUIDEプロジェクトの全体図

世界で突出した多剤治療の国、日本
 この研究プロジェクトの実施背景には、医師による治療法にばらつきが大きいことが問題としてありました。例えば、統合失調症においては、抗精神病薬の「単剤治療」を行うことが海外の各種ガイドラインで推奨されているものの、日本では突出して、数多くの抗精神病薬を処方する「多剤投与」が見られます。2011年の日本精神神経学会のシンポジウムでは、この問題が取り上げられました。

 また、抗精神病薬の多剤併用率が65%程度であり、抗パーキンソン薬、抗不安薬/睡眠薬、気分安定薬の併用率もそれぞれが30-80%と高いことが報告されました。
 そして2014年には、向精神薬の多剤処方に対する診療報酬の減額が決定しました。その後、「統合失調症薬物治療ガイドライン」が2015年9月に日本神経精神薬理学会より発表されました。このガイドラインは、精神科領域において日本初の日本医療機能評価機構EBM普及推進事業Minds(マインズ)法に則ったエビデンスに基づいたものであり、統合失調症においては抗精神病薬の単剤治療を行うことを明確に推奨しています。また、日本うつ病学会においてもうつ病と双極性障害の治療ガイドラインが発表されています。
 しかし、まだこのガイドラインの普及は充分とはいえない状況にあるため、よりよい精神科医療を広めるための工夫が必要でした。そこで、ガイドラインを作成している日本医療機能評価機構EBM普及推進事業Minds(マインズ)が推奨する、ガイドラインの普及・教育・検証を本研究グループが当事者・家族・支援者と共に進めることとなりました。

学会のホームページでダウンロード可

学会のホームページでダウンロード可

精神科医の理解度が著しく向上
 講習後の効果検証として、ガイドラインの理解度、実践度、処方行動ごとの評価を行ったところ、どちらのガイドライン講習においても、講習前と比較して講習後に顕著な理解度の向上が認められました。忙しい医師がわずか1日の講習を受講することにより、ガイドラインの理解度が著しく向上する意義は大きいと考えられます。
 本研究成果は、8月23日(金)に「Psychiatry and Clinical Neurosciences」オンライン版に掲載されました。
 EGUIDEプロジェクトの次の段階として、理解したガイドラインの実践度や向精神薬の処方行動の調査などを開始しています。

統合失調症薬物治療ガイドライン講習の成果

統合失調症薬物治療ガイドライン講習の成果

広範囲で、適切な治療の実施が期待
 EGUIDEプロジェクトで講習を行うことによりガイドラインの普及が進み、若手の精神科医に対してより適切な治療教育が行われることになります。その結果、より適切な治療が広く行われるようになることが期待できます。
 診療現場におけるガイドラインの活用が進むことは、医療スタッフと当事者やその家族などでの共同意思決定(SDM)*が広く行われるようになり、当事者の真の幸福の実現につながると考えられます。また、教育効果を検証することにより、さらに効果的な講習の方法論が今後も開発され、精神科医および精神科医療にかかわるメディカルスタッフへの生涯教育法の開発や、当事者やその家族への教育にもつながる可能性が期待されています。

【用語解説】
*SDM(Shared Decision Making: 共同意思決定):
当事者と治療者が治療に関する情報を双方に共有し話し合い、当事者の好みや価値観に沿った最適な選択を共に行うプロセス。

【研究支援】
本研究成果は、以下の支援によって行われました。
*国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 障害者対策総合研究開発事業「精神医療分野における治療の質を評価するQIとその向上をもたらす介入技法の開発と実用性の検証」(研究代表者:橋本亮太、JP19dk0307083)
*国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 障害者対策総合研究開発事業「うつ病性障害における包括的治療ガイドラインの標準化および普及に関する研究」(研究代表者:渡邊衡一郎、JP18dk0307060)
*厚生労働科学研究費補助金 障害者政策総合研究事業(精神障害分野)「向精神薬の処方実態の解明と適正処方を実践するための薬物療法ガイドラインに関する研究」(研究代表者:三島和夫、H29-精神-一般-001)

2019.8.23

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