本学医学部脳神経外科学教室 中冨浩文教授は、理化学研究所脳神経科学研究センター神経動態医科学連携研究チームのリーダーを務めています。
この度、中冨教授を含めた理化学研究所の研究員、東京大学大学院、山梨大学等を含めた国際共同研究グループは、ヒトの脳動脈瘤[1]検体から脳動脈瘤の発生に重要な体細胞遺伝子変異[2]を同定し、遺伝子を導入したマウス脳動脈瘤新生・抑制モデルを初めて樹立しました。
本研究成果は、開頭手術か血管内カテーテル治療しかない脳動脈瘤治療の現状に、薬物療法という第三の選択肢の可能性を開くと期待できます。
今回、国際共同研究グループは、外科手術時に摘出された脳動脈瘤の遺伝子を解析し、405個の遺伝子に体細胞遺伝子変異を同定しました。このうち90%以上の検体で変異が確認された16個の遺伝子は、炎症反応や腫瘍形成に関わる「NF-κBシグナル伝達経路[3]」に関連しており、そのうちの6個の遺伝子の変異が嚢状動脈瘤[1]と紡錘状動脈瘤[1]の両方に共通することを発見しました。さらに、この6遺伝子の中で最も頻度の高かった「血小板由来成長因子受容体β(PDGFRβ)[4]」の遺伝子変異をマウスに導入し、PDGFRβ遺伝子の変異によって実際に紡錘状動脈瘤様の拡張が起こること、その動脈瘤化をチロシンキナーゼ[5]阻害剤の全身投与で抑制できることを証明しました。
本研究は、科学雑誌『Science Translational Medicine』オンライン版(6月14日付:日本時間6月15日)に掲載されました。