「杏林」という名前は、中国の三国時代の名医、董奉(とうほう)に由来します。彼は患者から治療代を受け取る代わりに杏の苗を植えてもらい、その実を穀物と交換して貧しい人々を助けたという故事があります。この故事に倣い、杏の実を有効活用し、社会貢献にも役立てようという趣旨で、一昨年、渡邊学長の呼びかけのもとに「杏の実プロジェクト」が発足し、昨年から杏ジャム作りが始まりました。
しかし、今年は杏の実が不作で、昨年の1/4以下しか実りませんでした。それでも学生有志と生物学教室のメンバーが共同で、収穫の一部でジャムを作りました。
少量ながら出来上がった手作りジャムは、臨床実習に向かう医学部4年生に激励の意を込めて贈られ、残りは今回の収穫祭で試食されました。杏ジャムはクラッカーやヨーグルトに添えて提供され、その甘酸っぱい味は学生たちにも好評でした。今年は収穫が少なく、出来たジャムの量も十分ではなかったのでサンドイッチなどの軽食も用意されました
今年の収穫祭には、総合政策学部と保健学部の学生だけでなく教員も参加し、約70名が集まり学部の垣根を越えた交流の場にもなりました。途中で挨拶に立った本学卒業生で医学部医学教育学の冨田教授から30年以上前の学生時代の話を聞けるなど、笑いの絶えない楽しい会となりました。杏の実に触れることで、杏林という名前の由来に思いを馳せ、その意味する「社会に貢献できる人物」について考えるきっかけとなったのではないでしょうか。
今年は、杏の実プロジェクトの一環として、収穫された杏の一部を三鷹市内の工房に依頼し、販売用のジャムに加工してもらいました。この杏ジャムには学生がデザインしたオリジナルラベルが貼られ、10月26日と27日に開催される杏林祭(学園祭)で販売されます。杏林祭の実行委員を務める医学部3年生の森田息吹さんから、杏ジャムの販売で得られた収益は全額、三鷹市の子ども食堂「だんだん・ばあ」の活動に役立ててもらう予定であることが今回の収穫祭で発表されました。
杏の実プロジェクトの一員の医学部の粟崎教授は、「将来的に、社会奉仕活動や学生間、学生と教員、職員の交流に杏の実が役立てば、董奉の教えを実践できるように思います。手探りで杏の実プロジェクトを進めていますが、試行錯誤しながら方向が見えてきた気がします」と話しています。
*「だんだん・ばあ」は本学保健学部の加藤雅江教授が理事を務めるNPO法人が運営する居場所づくりプロジェクトで本学の学生もボランティアで参加しています。