昼食後の午後は誰しも眠気を感じるものですが、その原因の一つに「おなかに血が行くから」というようなことが古くから言われています。実際に食後はおなかに行く血液が増え、反対に頭に向かう血液の減ることが、超音波検査を用いた研究室の検討で明らかになっています(1)。一方、食後に15分程度の短い昼寝をすると、精神活動が活性化されるとともに、仕事の効率やパフォーマンスの向上することが報告されています。
そこで、2019年当時の保健学部臨床工学科4年生に、昼食後15分程度の昼寝をする場合としない場合を超音波検査で調べて比較する卒業研究を指導しました。その結果、短時間の昼寝により昼食後のおなかの血流増加が抑えられ、頭へと向かう血流減少も抑えられることが明らかになりました(2)。昼食後に短い昼寝をすると、午後の時間帯をすっきりとした頭で過ごすことができるかもしれません。
さらに、研究室の芝﨑翔平 助教(臨床検査技術学科)による検討により、この作用は男性で顕著にみられる可能性も示唆されました(3)。これら一連の成果は海外の学術雑誌に掲載されています。
食後の眠気の原因は血流変化だけではありませんが、一連の研究成果は興味深い知見でした。当研究室は、保健学部の臨床工学科と臨床検査技術学科の教員と学生で構成され、様々な生理現象について超音波検査を用いて研究しています。今回の「昼寝」のほか、これまでに「むくみ」(4)や「肩こり」(5,6)など日常的な事象についても解析し、さらに研究を発展させています。保健学部の学科の枠を越え、さらには医学部の協力もあり、全学的な取り組みの成果であると考えています。
【掲載論文】
1. Clin Physiol Funct Imaging. 2019;39(3):226-229.
2. Eur J Appl Physiol. 2022;122(2):523-530.
3. Eur J Appl Physiol. 2024;124(3):873-880.
4. Clin Physiol Funct Imaging. 2020;40(6):381-384.
5. Clin Physiol Funct Imaging. 2020;40(6):385-389.
6. Eur J Appl Physiol. 2024;124(6):1925-1931.
*1)2022年「European Journal of Applied Physiology」— 掲載論文2
タイトル:昼食後の短い昼寝が午後の血行動態におよぼす作用
Possible effects of short rest after lunch on hemodynamics in the afternoon
著者:中尾日向子(当時 保健学部 臨床工学科4年生)、柏倉千紘(当時 同 学生)、芝﨑翔平(保健学部 臨床検査技術学科 助教)、原島敬一郎(同 准教授)、中島 哲(当時 同 特任教授)、大西宏明(医学部 臨床検査医学 教授)、渡邊 卓(同 教授)、岸野智則(保健学部 臨床工学科 教授)
*2)2024年「European Journal of Applied Physiology」— 掲載論文3
タイトル:ドプラ超音波検査で評価した昼食後の短い昼寝が血行動態におよぼす性差
impact of a short rest after lunch on hemodynamics as assessed by Doppler sonography
著者:芝﨑翔平(保健学部 臨床検査技術学科 助教)、岸野智則(保健学部 臨床工学科 教授)、瀬井依子(臨床検査技術学科 助教)、
原島敬一郎(同 准教授)、坂田好美(保健学部臨床工学科 教授)、大西宏明(医学部 臨床検査医学 教授)、渡邊 卓(同 教授)